HAクラスターの概要や、
ストレージ構成について紹介します。
①HAクラスターとは
HAクラスター(High Availability Cluster)とは、複数台のサーバーを相互に接続して連携させる(クラスター化する)ことで、システムを冗長化し、 コンピューターシステム全体の可用性(アベイラビリティ)を高めることを目的としています。また、システム障害によるシステム停止時間を最短にする迅速復旧機能も含みます。
HAクラスターは、「ミッションクリティカルなデータベースシステム」「基幹業務システム」「商用Webサイト」など、高い信頼性が求められ、システム停止を避けなければならない環境で多く利用されます。
「フェイルオーバー」と「フェイルバック」
フェイルオーバー
HAクラスターでは、稼動中のアクティブサーバーに障害が発生し、サービスを継続できなくなった場合に、自動的にスタンバイサーバーへ処理を引き継ぐことで、システム全体としてのサービス提供機能を維持します。
この切り替え処理のことを「フェイルオーバー」と呼びます。
フェイルバック
フェイルオーバー後、現アクティブサーバー(元スタンバイサーバー)から、現スタンバイサーバー(元アクティブサーバー)へ処理を引き継ぐことを「フェイルバック」と呼びます。
HAクラスター構成ソフトウェア
HAクラスターを構成するためのソフトウェアは、「HAクラスターソフトウェア」や「HAクラスタリングソフトウェア」などと呼ばれます。
HAクラスターソフトは、関連サーバー群を常に監視し、アクティブサーバーに障害が発生した場合、スタンバイサーバーへ切り替える処理を実行します。
HAクラスター構成方式
アクティブ/スタンバイ構成
「アクティブ/スタンバイ構成」は、HAクラスター構成の中で、最もスタンダードな構成です。平常時は、サービスはアクティブサーバー上で動いていて、スタンバイサーバーは待機状態になっています。
アクティブサーバーに障害が発生した場合、アクティブサーバーからスタンバイサーバーへ処理を切り替えることで、サービスを継続する方式です。
アクティブ/アクティブ構成
「アクティブ/アクティブ構成」は、2台のサーバーが両方ともアクティブになっている状態です。平常時は、「サーバーAでサービスAが稼働」「サーバーBでサービスBが稼働」のように、それぞれ別のサービスを提供しています。
サーバーAに障害が発生した場合、サーバーAで稼働していたサービスAを、サーバーBに引き継ぎます。この場合、サーバーBがサービスAとサービスBの両方のサービスを提供します。
「(1)アクティブ/スタンバイ構成」でのスタンバイサーバーを平常時にも稼働させることができるため、サーバーリソースを有効に活用できるメリットがあります。
N対1スタンバイ構成
「N対1スタンバイ構成」とは、平常時、N台のサーバーでそれぞれサービスを稼働させて、その中のどれかのサーバーに障害が発生した場合に、スタンバイサーバーに引き継ぐ構成です。
ただし、「フェイルオーバー時にパフォーマンス劣化が生じやすい」というデメリットがあります。
②HAクラスターのストレージ構成
「共有ストレージ」と「レプリケーション」
HAクラスターにおけるストレージ構成には、「共有ストレージ」と「レプリケーション」の2種類に大別されます。クラスタソリューションの選択時において、どちらを選択するかについては考慮すべき重要な点となります。
それぞれのメリットとデメリットなどについて紹介します。
「共有ストレージ」構成
「共有ストレージ」構成とは、アクティブサーバーとスタンバイサーバーで同一ストレージを共有する構成です。サーバーA(アクティブ)に障害が発生した場合、サーバーB(スタンバイ)に処理が切り替わりますが、サーバーBもサーバーAがアクセスしていた共有ストレージにアクセスを行います。
■「共有ストレージ」構成のメリット
・レプリケーション未対応アプリケーションへ対応可能
共有ストレージ構成にすることで、独自にレプリケーション機能を持たないアプリケーション(データベースなど)に対して、処理性能に影響を与えずに冗長化し、可用性を向上できます。
・信頼性の高いフェイルオーバー
ストレージが1つのみであるため、フェイルオーバーの信頼性が高まります。
・フェイルオーバー時のデータ不整合発生を軽減
ストレージが分散しているレプリケーション構成と比較した場合、共有ストレージ構成では、実データは1つの共有ストレージにのみ存在しているため、フェイルオーバー時のデータ不整合が発生するリスクを低減できます。
また、データ復旧のための時間が発生しません。
・ネットワークスペックに影響されない
レプリケーションを行う必要がないため、ネットワークパフォーマンスに影響されません。
■「共有ストレージ」構成のデメリット
・高コスト
共有ストレージとして、高額なストレージハードウェアを用意する必要があるため、導入時コストが高額になる傾向があります。
・クラウド(仮想環境)展開は不可
共有ストレージは、クラウドや仮想環境において使用できないため、オンプレミスからクラウドへの展開を行う場合などに制約が発生します。アプリケーションのデータ構成について、共有ストレージを利用するように設定(改修)する必要があります。
・共有ストレージが単一障害点に
ストレージが1つであるため、共有ストレージが単一障害点とならないように、ハードウェア構成を適切に構成する必要があります。
「レプリケーション」構成
「レプリケーション」構成とは、サーバーA(アクティブ)とサーバーB(スタンバイ)で、それぞれのローカルストレージを利用し、レプリケーションによりデータ同期を行う構成です。それぞれのローカルディスクをレプリケーションすることで、ミラーボリュームを作成し、仮想的な共有ディスクとして扱います。
サーバーA(アクティブ)に障害が発生して、サーバーB(スタンバイ)に処理が切り替わった場合、サーバーBはサーバーAからレプリケーション同期されている、サーバーBのローカルストレージにアクセスします。
■「レプリケーション」構成のメリット
・低コスト
ローカルストレージを使用し、高額な外部ストレージを用意する必要はないため、安価にHAクラスターを構築できます。
・シンプルに導入可能
共有ストレージ構成とは異なり、ハードウェア構成がシンプルであるため、導入しやすいメリットがあります。
・ディザスタリカバリ対応
共有ストレージではないため、遠隔地へのレプリケーション(フェイルオーバー)が可能です。
クラウド内や遠隔地サーバーに対してレプリケーションを行うことで、ディザスタリカバリサイトを構築できます。
HAクラスター製品選定ガイド
具体的な製品を知りたくなった方へは「HAクラスター製品選定ガイド」をご覧ください。
内容
- HAクラスターの基礎/選定のポイント
- 主要なソフトウェアの特長と解説
- 要件に合わせたHAクラスター簡易チャート