システム障害により約1/4が“1,000万円超”の損失?システム停止による経営リスク低減と安定稼働への一手とは

    DX推進やクラウド活用が進む今、見過ごせない経営課題が「システムの停止リスク」です。顧客向けサービスや基幹システムが一時でも停止すれば、業務停滞や売上機会の損失にとどまらず、社会的信用やブランド価値の毀損へ直結します。私たちサイオステクノロジーの調査では、過去3年間で7割超の企業が1時間以上のシステム停止を経験し、経済的損失が最大だった障害では約4社に1社が1,000万円超の損失を被っていたことが明らかになりました。

    本記事では、こうした実態を踏まえ、システム停止がもたらす経営リスクを整理するとともに、安定稼働と事業継続を実現するための可用性対策について解説します。

    システム障害が企業経営に及ぼす影響

    多くの企業がDX推進を掲げる中で、情報システムの安定稼働は、あらゆる企業において向き合うべき経営テーマとなっています。顧客接点や基幹業務を支えるシステムが一時停止するだけで、業務全体に影響が波及し、収益・顧客満足・企業評価を同時に揺るがすリスクへと発展しかねません。

    近年は、情報システムの複雑化、高度化が進み、オンプレミスとクラウドが混在する構成も一般的になりました。多様なハードウェア/ソフトウェアが密接に連携して稼働する中で、障害の未然防止や早期復旧のハードルは上がり、その難易度は高まる一方です。もはやシステム障害は例外ではなく、常に想定しておくべきリスクだと言えます。だからこそ、発生を前提に「どれだけダウンタイムを抑えるか」「いかに確実に復旧させるか」を設計に織り込むことが、経営のレジリエンスを左右します。

    私たちサイオステクノロジーが独自に行った「ITシステム障害と事業リスクに関する実態調査【2025」では、こうしたリスクを裏付ける結果が以下のように示されています。

    1)一定の頻度で発生する長時間のシステム停止

    過去3年間に複数回のシステム障害を経験した企業は、全体の約5割に達しています。この結果から、システム障害は突発的な例外ではなく、一定の頻度で起こり得る事象として捉える必要があります。加えて、1時間以上のシステム停止を経験した企業は7割を超えており、復旧まで長時間を要するケースが少なくない実態が明らかになっています。

    図:過去3年間に発生したシステム障害で、最も長いダウンタイム(停止時間)

    2)ダウンタイムに対する許容度

    許容できるダウンタイムを5分未満とする回答は、全体の6割を超えました。以降、ダウンタイムの増加に応じて許容度は減少傾向に。つまり、多くの情報システム担当者が、障害が発生しても5分以内にはシステムを復旧させたいと考えていることが示されました。手動対応だけでこうした水準を実現するのは難しいため、自動復旧・自動切替の仕組みが求められていると言えます。

    図:ダウンタイムに対する許容度

    3)システム障害による経済的損失

    障害発生後1年間の損失総額については、約25%の企業が1,000万円を超えたと回答しています。中には「1億円以上」とする企業も6.3%に上り、システム障害による経済的損失が企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性の高い水準である状況が示されています。

    図:障害発生後1年間の損失総額

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    障害対応における課題

    経営リスクをもたらすシステム障害に対応するため、企業にはインシデント対応プロセスの整備が求められています。インシデント管理の目的は、業務への影響を最小限に抑え、迅速な復旧を実現する点にあります。

    ITサービス管理のベストプラクティスをまとめたITIL(Information Technology Infrastructure Library)では、インシデント管理のプロセスとして、検出、優先度の判断、対応策の決定、進捗管理、報告といった一連の流れが定義されています。このようなプロセスが提唱されているものの、これらを現場で円滑に運用し、迅速なサービス復旧を実現するのは容易ではありません。実際の情報システム部門では、夜間や休日の対応負荷、属人化した運用がボトルネックになりやすいのが実情です。手動対応が中心となっている場合、監視ツールから発せられる大量の通知に追われ、重要なアラートを見逃すリスクが高まります。対応者の負荷が蓄積していくと、判断の遅れや対応品質の低下につながる恐れもあります。

    HAクラスターによる可用性対策

    ダウンタイムを抑制する手段の1つとして、自動復旧や自動切替の機能を備えたHAクラスターによる高可用性構成が注目されています。HAクラスターは、複数台のサーバーを相互に接続し、冗長化することで、システムの可用性を高める技術です。本番系と待機系のサーバーをあらかじめ用意しておき、稼働系のサーバーに異常がないかを常時監視します。万が一の障害が発生した場合には、待機系へ自動的に切り替えるフェイルオーバーの仕組みにより、サービスの継続が可能になります。これにより、ダウンタイムを最小限に抑え、経済的損失の軽減が期待できます。顧客向けサービスや基幹システムのような重要インフラでも、HAクラスターで冗長化されるケースが増えています。

    障害対策としては、バックアップの取得も広く採用されています。バックアップは、特定の時点までデータを確実に復旧するデータ保全の観点から欠かせない手段です。ただし、バックアップのみでは障害の自動検知や即時復旧には対応できず、ダウンタイム軽減には限界があります。サービス継続とダウンタイム最小化を目的としたHAクラスターと組み合わせて運用し、データ保全と可用性向上の両立を図ることが重要です。

    先述した私たちの調査では、システム障害の原因の74.5%がソフトウェアやハードウェアに起因していることが示されました。これらの多くは、HAクラスターによる冗長構成と自動復旧を前提とした設計により、影響を最小化できる可能性があります。しかしながら、HAクラスターの導入率は4割強にとどまっていることも判明しています。

    可用性向上の取り組みは、監視(59.4%)やバックアップ(52.1%)など運用面の対策が中心で、実態としては人手対応が依然として主流であることがうかがえます。つまり、多くの企業が「復旧は人手対応で十分」という旧来型運用から脱却できていない可能性があります。例えば、夜間や休日、担当者不在の状況を考えてみてください。従来の人手依存から、自動復旧を前提とした設計方針への転換を検討する余地は大きいと言えるでしょう。

    HAクラスター製品「LifeKeeper」導入による成功事例

    HAクラスターソフトウェア「LifeKeeper」は、世界で9万ユーザーライセンスを超える導入実績を持つ製品です。オンプレミス/仮想/クラウドの各環境に対応しており、日本語による24時間365日のサポートにも対応、設計・構築から運用まで一貫して支援できる点が特長です。

    また、システムの安定稼働を考える上で、災害対策(Disaster Recovery)は不可欠です。しかし、単一拠点でのバックアップやHAクラスターによる冗長化だけでは、広域災害やインフラ障害には対応しきれない場面も想定されます。複数サイトにまたがってLifeKeeperを導入すれば、メインサイトに障害が発生した際に地理的に離れた災害対策サイトへ自動/半自動で切り替え、サービス継続が可能です。これは自然災害だけでなく、広域の通信障害や停電への備えとしても有効です。

    以下では、LifeKeeperを導入した企業の成功事例を紹介します。

    1)数千万円規模の経済的損失リスクを軽減した可用性対策

    株式会社デイトナ・インターナショナル様の事例では、データの集配信基盤をクラウド上に構築していました。各種マスタ情報や、商品、在庫、社員、配送といった複数のシステムと連携する全社共通の基盤です。

    このシステム連携が停止した場合、発注や出荷、在庫管理といった業務に支障が生じ、オンラインショップだけでなく、実店舗やバックオフィス業務にも影響が及ぶ状況でした。特にキャンペーン期間中に障害が発生すれば、販売停止を余儀なくされ、復旧までに1週間を要します。データ不整合の状態が1日続くごとに、数千万円規模の損害につながるリスクが認識されていました。

    こうした課題を受け、同社はLifeKeeperを活用し、集配信基盤を冗長化した環境へ移行しました。システム部門では、障害発生時に24時間365日の対応を強いられる点に強い懸念を抱いていましたが、LifeKeeper導入後は、冗長化による安心感が得られています。加えて、サポート対応の迅速さについても高く評価されています。

    2)安定稼働が重視される金融業界で自動切換による事業継続を実現

    金融サービスを提供するiBankマーケティング株式会社様では、銀行間のデータ連携にファイル転送アプリケーションを利用していました。ユーザー数の急増を背景に、オンプレミス環境からクラウド環境への移行を検討する中で、アプリケーションの可用性確保が課題となっていました。

    クラウド標準の可用性対策では構成が複雑化しやすく、運用負荷の増大が懸念されていました。そこで、シンプルな構成でアプリケーションの冗長化を実現できるLifeKeeperが採用されました。国内の金融機関における豊富な導入実績も、選定を後押しする要因となっています。

    クラウド環境への移行後には、クラウド側の障害などによってフェイルオーバーが発生しましたが、本番系から待機系への切り替えは問題なく行われました。その結果、サービスレベルを維持したまま安定稼働が継続されています。日本語による手厚いサポート体制も高い評価を得ています。

    システムの安定稼働に向けた次の一手

    経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート 」の「システムのモダン化の契機」(25ページ)によると、システム刷新の契機は、大規模障害や運用・保守要員の離脱といった受動的要因が上位を占めています。つまり、不利益が顕在化してからでなければ意思決定に至らない企業が少なくない、という実態が垣間見られます。

    しかし、システム障害はどの企業にも起こり得るものであり、売上減少にとどまらず、社会的信用の失墜やブランド毀損にも及ぶ可能性があります。さらに、1時間以上のシステム停止が高い頻度で発生しているにもかかわらず、許容できるダウンタイムは5分以内と考えている企業が多数を占めています。この高い要求を考慮すると、人手による復旧対応には明確な限界があります。システムの安定稼働と事業継続を確保するには、自動復旧を前提とした設計への方針転換が重要になります。

    HAクラスター製品「LifeKeeper」による自動復旧と冗長化は、ダウンタイムを最小化し、経済的損失の抑制に寄与します。さらに、地理的冗長化を含むBCPや災害対策の強化にも直結します。障害に起因する経営課題に対応するよう、HAクラスター導入を含む「次の一手」を具体化することが、これからの企業に求められています。

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