クラウドリフトで発揮される「OCI」(Oracle Cloud Infrastructure)の本領とは

     DXの取り組みが拡がり、企業のクラウド利用が加速するなか、クリティカルシステムなどで、セキュリティやコスト、技術面などのハードルから、クラウドリフトを諦めるケースも多いようだ。そこで今回は、共有ディスク構成やHAクラスター構成をとるクリティカルシステムを前提に、“クラウドリフトをあきらめずに済む” OCI(Oracle Cloud Infrastructure)活用シナリオを紹介する。

    DXやテレワーク対応でクラウドシフト(クラウドリフト)が加速

    企業の間でクラウドファーストが叫ばれるようになって久しい。国内では、“2025年の崖”が提起された2018年以降、DXを進めるうえでクラウド活用が不可避となっていたところに、2020年以降新型コロナ感染症が地球規模で発生。感染症対策としてテレワーク導入が拡がり、Web会議などSaaSの新規導入や、オンプレミスシステムの“クラウドリフト※”が加速した。総務省の「情報通信白書2023」によれば、世界のパブリッククラウド市場規模は31316億円(前年比27.9%増)、国内は15879億円(前年比28.5%増)とされ、依然としていずれも高い伸びを示している。

    ※オンプレミス環境(社内やデータセンターで運用する物理サーバー)で運用されている既存システムを、アプリケーションやデータなどにはなるべく手を付けずに、サーバーやオペレーティングシステム(OS)といった動作環境をクラウド 環境へ移行すること。

     パブリッククラウドに関する“誤解”から、クラウドリフトを諦めるケースも

    インフラの運用から解放されテレワークとの親和性も高いことから、オンプレミスの既存システムをクラウドリフトする企業が増える一方で、HA構成(高可用性構成)を組んでいるようなクリティカルなシステムを中心に、下記のような理由からクラウドリフトをあきらめるケースもよく聞く。だが、これらは「多くのパブリッククラウドでは」あるいは「かつては」と但し書きをつけるべきで、少なくとも現時点においては“誤解”と言うべきものだ。

    “誤解”その1:パブリッククラウドは共有ストレージ構成に対応していない 

    複数のサーバーがアクセスしてファイルの読み書きを行う共有ストレージ構成について、パブリッククラウドでは1つのストレージに複数のインスタンスをアタッチできないため、そのままクラウドリフトすることは不可能と認識している方が多い。だが、パブリッククラウドも日々進化しており、一部パブリッククラウドでは共有ストレージ構成も可能だ。

    “誤解”その2:仮想IPを利用したHAクラスター構成が組めない

    冗長化したサーバーにクラスターソフトウェアを導入しHAクラスター構成をとっているケースについて、パブリッククラウドではクラスターソフトウェアが使用する仮想IPアドレスを利用できないため、クラウドリフトできないと認識している方も多いが、実際には一部のパブリッククラウドで利用可能である。

    クラウドリフトにお勧め「Oracle Cloud Infrastructure」

    前段の2つの“誤解”だが、それぞれ単独のケースもあれば、共有ストレージにアクセスする複数のサーバーにクラスターソフトウェアを導入して自動でフェールオーバーする“合わせ技”を利用するケースも多い。そして、そのような高可用構成・環境においても クラウドリフトに対応するパブリッククラウドはある。なかでもお勧めなのが「Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)」だ。

    OCIは商用データベース「Oracle Database」で知られるオラクル社の企業向けパブリッククラウドサービスで、22カ国/41リージョンのグローバル・クラウド・データセンター・インフラストラクチャでIaaS/PaaSソリューションを提供。国内では東京(2019年5月)と大阪(2020年2月)の2リージョンが開設され、トヨタ自動車やNTTドコモといった企業がユーザーに名を連ねている。主な特長は以下の通りだ。

    特長①Oracle Databaseに最適化

    オラクル社が提供するパブリッククラウドサービスだけに、Oracle Databaseとの親和性は随一と言える。Oracle Database Enterprise Editionで利用可能な「Oracle RAC(Oracle Real Application Clusters)」の実行が認定&サポートされている唯一のクラウド製品であるほか 、もともとOracle Databaseの利用を前提しているだけに、可用性や管理性だけでなくパフォーマンスのSLAも提供している。

    特長②すぐれたコストパフォーマンス

    主要パブリッククラウドのなかでも後発ということもあり、先行する他社サービスに対しかなり競争力のある料金を設定。同等スペックのサービスを圧倒的に低コストで提供している。Oracle DatabaseのBYOLに際し、他社サービスがCPU数制限などによりライセンス費用が上昇してしまうケースでも、これを回避してクラウドリフトが可能なほか、移行期間中にはオンプレミスとOCIの並行稼働が最大100日間認められている。

    特長③共有ストレージや仮想IPにも対応

    OCIのストレージサービスであるブロック・ボリュームは複数インスタンスの割り当て&アクセスが可能で、オンプレミス環境の共有ストレージ構成と同様の環境を実現できる。また、クラスターソフトウェアを利用すれば仮想IPを利用したHAクラスター構成も可能で、前段の2つのケースにおいても、オンプレミスからのクラウドリフトをあきらめずに済む。

    OCIへのクラウドリフト・シナリオに最適なクラスターソフトウェア「LifeKeeper」

    最後に、OCIへのクラウドリフトで利用するクラスターソフトウェアとして「LifeKeeper」をお勧めしておく。OCIを含む主要クラウドに対応しており、オンプレミス環境で共有ストレージや仮想IPを利用してHAクラスター構成をとっているケースなどで、構成や運用(スクリプト含む)の変更を最小化して、スムーズなクラウドリフトを実現する。

    しかし、OCI上でHAクラスターを使用するためには、OCI上の仮想IPアドレスとその上のOSから見た仮想IPアドレスで扱いが違うため、連携させるためのスクリプトをユーザー側で実装する必要がある。LifeKeeperには、その工数が不要になるオプション「Recovery Kit for OCI」の提供がある。「Recovery Kit for OCI」は、メーカー側で既に用意されたLifeKeeperで利用する仮想IPアドレスをOCIに登録して有効化する事ができるスクリプトだ。必要な情報を入力してリソースを作成するだけで、OCI上で切り替え可能な仮想IPアドレスが利用できるようになる。 

    さいごに

    Oracle Database SE(Standard Edition)ユーザーであればご存知かと思うが、RACReal Application Clusters)やSEHAStandard Edition High Availabilityを利用している場合、そのままOCIへクラウドリフトすることはできない。RACについては、Oracle Database EEEnterprise Edition)に移行すれば利用可能だが、ライセンスコストが跳ね上がり非現実的で、SEHAはそもそもOCIに対応していないためだ。だが、こうしたケースでRACSEHAの代わりに「LifeKeeper」を利用すれば、OCIでも同等のHAクラスター構成が構築可能だ。

     

    Step by Stepガイドダウンロード

    Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上でのRecovery Kit for OCIを使用したクラスター構成手順についてのStep by Step 資料をダウンロードいただけます。スクリーンショットつきで丁寧に手順が解説されていますので、よろしければご覧ください。

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