GCP(Google Cloud Platform)とは? 特徴やAWSとの違い、可用性を解説

    この記事では、「GCPとは何か」から始まり、GCPを利用するメリット、AWSとの違いについて解説していきます。さらに後半では、GCP上で基幹系システムを構築する場合の可用性についても解説します。

    Google Cloud Platform (GCP)の特徴とは

    Google Cloud Platform(GCP)は、Googleが提供するクラウドコンピューティングプラットフォームです。クラウドコンピューティングは、ITインフラストラクチャやサービスをインターネット経由で提供し、利用者が必要に応じて利用できる仕組みです。

    パブリッククラウドの基本概念

    GCPは、パブリッククラウドであり、他の主要なプロバイダーであるAWS(Amazon Web Services)やAzure(Microsoft Azure)と同様に、多くの企業や開発者によって利用されています。パブリッククラウドは、インターネット経由でアクセス可能なリモートのデータセンターを提供し、ユーザーは必要なリソースを仮想的に利用できます。

    GCPの主な特徴

    GCPは多くの特徴を備えており、その中でも以下の点が際立っています。

    • 柔軟性と拡張性: GCPは仮想マシンからサーバーレスコンピューティングまで、幅広いコンピューティングオプションを提供します。ユーザーは必要に応じてリソースをスケーリングできます。
    • データの処理と分析: BigQueryなどのツールを利用して、大規模なデータの処理と分析が容易です。
    • AIと機械学習: GCPは機械学習モデルのトレーニングや推論に必要なリソースを提供し、TensorFlowやAutoMLを含むツールをサポートします。

    GCPを利用するメリット

    GCPを利用することによるメリットはたくさんあります。主なものを3つ紹介します。

    • Gmail、YouTubeなどを提供している、高性能で安定したITインフラを利用できる
    • 機械学習プラットフォームであるVertex AIなど、すぐに利用できるAIサービスが充実している
    • アベイラビリティーゾーンをまたがるサブネットを構築できるなど、柔軟かつ高速なネットワークを利用できる

    GCPとAWSの比較

    GCPの強みは、Googleの最新技術が利用できるビッグデータ解析や機械学習機能が用意されている点です。GCPでデータ解析を行う場合、Googleのデータセンター内のリソースが自動で割り当てられるため、高負荷の処理も問題なく実行できます。他のクラウドサービスでは計算リソースの追加やチューニングが必要になる場合もあるため、データ解析に適した環境を自動で提供してくれるGCPのメリットは大きいでしょう。

    一方、AWSの強みは、AWS特有の機能を使うことで、複雑なシステム構築も可能になる点です。また、AWSはSQL ServerやOracleといった商用ライセンスのサポート範囲が広いという特徴もあります。既存システムとの兼ね合いなどで商用の正式サポートを必要とする場合は、AWSの方が適しているケースも多いでしょう。

    GCPとAWSにはそれぞれ違った強みがあるため、導入目的によってどちらが適しているか変わります。

    GCPが選ばれる理由

    GCPが選ばれる理由は多岐にわたりますが、主なものは、特長のパラグラフで記載した内容と非常に近しく、以下がその一部です。

    • 高速なネットワーク: Googleのグローバルネットワークは高速で信頼性があり、データの迅速な配信が可能です。
    • データ分析の強化: BigQueryなどのデータ分析ツールは非常に強力で、大規模なデータセットを処理できます。
    • AIと機械学習: GCPは機械学習モデルのトレーニングやデプロイメントに優れたプラットフォームを提供し、AIの開発をサポートします。

       

    GCPの可用性の確保方法

    GCPを適切に利用するために、可用性の確保方法を理解することが重要です。以下にいくつかのポイントを紹介します。

    耐障害性の高いデータセンターの利用

    GCPは世界中に複数のデータセンターを展開しており、これらのデータセンターは高い可用性を持つ設計で運用されています。データセンター間の冗長性を活用することで、サービスの可用性を向上させることができます。

    マルチリージョンとゾーンの選択

    リージョンは、3つ以上のゾーンの集合です。ゾーンは、1つのデータセンターと考えると想像しやすいかと思います。よって、1つのリージョンは、高速に通信できるネットワークで繋がれた3つ以上のデータセンターの集合体と言えます。

    2023年11月現在、GCPは世界に、39のリージョン、118のゾーンを展開しております。日本には東京リージョン(asia-northeast1)と大阪(asia-northeast2)リージョンの2つのリージョンがあり、それぞれに3つのゾーンが用意されています。

    詳細はGoogle Cloudの「Cloudのロケーション」をご確認ください。

    ユーザーはアプリケーションやデータの要件に合わせて最適なリージョンとゾーンを選択できます。マルチリージョン構成や、マルチゾーン構成を採用することで、地理的な冗長性を確保し、障害への対応力をより高めることができます。

    ストレージの冗長化とバックアップ

    GCPはデータの冗長化とバックアップをサポートしており、データの損失を防いでいます。例えば、Cloud Storageでは複数のゾーンの複数のデバイスにコピーが保存され、データの信頼性を大きく向上させています。

    自動スケーリングと負荷分散

    GCPでは自動スケーリングと負荷分散を活用して、アプリケーションの可用性を向上させることができます。以下に詳細を説明します。

    自動スケーリング

    GCPは、自動スケーリング機能を提供しています。これにより、アプリケーションのトラフィックが増加した際に、必要に応じて仮想マシンの数を増減させることができます。これにより、急激なトラフィックの増加に対応し、サービスの可用性を維持できます。

    負荷分散

    GCPでは、負荷分散を実現するためにGoogle Cloud Load Balancingを利用できます。このサービスは、トラフィックを複数のバックエンドサーバーに均等に分散し、可用性を高めます。配下の仮想マシンに障害が発生した場合でも、トラフィックは他の健全な仮想マシンに自動的に転送されます。

    障害への対応とSLA

    GCPは障害に対する高い信頼性を提供するために、多くのサービスやツールを備えています。例えば、 Google Cloud Service Health ダッシュボード(旧 Google Cloud Status Dashboard)ではGCPサービスのステータスをリアルタイムで確認でき、障害が発生した際の対応情報を提供します。

    また、GCPはサービスごとにSLAを提供しており、サービスの稼働率を確保するための対策を講じています。例えば仮想マシンの場合は、マルチゾーン配置で99.99%、メモリ最適化仮想マシン単体だと99.95%といった感じです。

    出展:https://cloud.google.com/compute/sla (2023年11月時点)

    詳しくは、GCPのSLAに関してまとめたこちらの記事をご覧ください。
    Google CloudのSLAを語る~保証対象は?返金方法や申請時の注意点も紹介~

    HAクラスタを利用した可用性向上

    高い信頼性をもつGCPですが、仮想マシンにおいては他のパブリッククラウドと同様に、OSより上のレイヤーにおける障害の検知と対策は、利用者の責任で行う必要があります。
    (仮想マシン利用時は、下図の左から2番目「IaaS」にあたります。)

    責任共有モデル

    2020年3月に米アトランタのデータセンターにて障害がありましたが、止められない基幹系システムを仮想マシン上で運用する場合、様々なケースを想定した障害対策の検討が必要となります。

    • 仮想マシンが存在する物理ホストの障害
    • 物理ホストが存在するサーバーラックの障害
    • ラックが存在するゾーン全体に及ぶ障害 [広域障害]
    • 災害などによるリージョン全体に及ぶ障害

    クラウドの特性を活かし、1つのゾーン全体に及ぶ、いわゆる「広域障害」の影響も最小化できる解決策のひとつが、HAクラスタソフトの活用です。アプリケーションの障害を検知し、自動的に待機系へサービスを切り替えることでダウンタイムを大幅に軽減します。

    サイオステクノロジー社が提供する、「LifeKeeper / DataKeeper」はHAクラスタソフトのひとつで、仮想マシンにインストールして利用いただけるいわゆるミドルウエアです。これらを使った高可用性ソリューションは、同一リージョン内の異なるゾーンに稼働系と待機系を配置することを推奨しており、パブリッククラウドの広域障害対策として非常に有効な解決策となっています。

    GCP上でも、JP1/AJS3、HULFT、SAP NetWeaverなどの冗長化において既に多くの実績があります。

    以下、簡単にこの高可用性ソリューションをご紹介します。

    GCP上のHAクラスターソリューション

    サイオステクノロジーでは、Linux、Windowsの両環境にて、GCP上のHAクラスター構成をサポートしています。

      1. LifeKeeper for Linuxを使ったHAクラスター構成
      2. LifeKeeper for Windowsを使ったHAクラスター構成
      3. Windows Server Failover Clusteringを使ったHAクラスター構成

    ソリューションの概要とシステム構成図などのベストプラクティスは、以下のページを参照ください。

    なお、3「Windows Server Failover Clusteringを使った」具体的な構築手順はGoogle CloudのWebサイト上で公開されています。以下もぜひご参考ください。
    >>[Windows Server フェイルオーバー クラスタリングの実行]

     

    GCPを利用する際、これらの要素を適切に活用することで、高い可用性を確保し、信頼性のあるクラウドベースのサービスを提供できます。また、障害に対する対応策を理解し、適切な設計とベストプラクティスを採用することが、ビジネスの持続性を確保するために重要です。

    この記事を通じて、Google Cloud Platform(GCP)の特徴、他のパブリッククラウドとの比較、および可用性の確保方法について詳しく解説しました。GCPを検討している方や提案を行う方にとって、GCPの利点や適切な運用方法を理解するのに役立つ情報となれば幸いです。GCPの導入を検討している場合は、詳細な調査と計画を行い、ビジネスの成功に向けて最適なソリューションを見つけてください。

     

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