多くの業界で導入されているHULFT。オンプレミスで運用されることの多かったHULFTですが、近年ではクラウドに移行する事例も増えてきています。オンプレミスでもクラウドでも、安定運用のために障害対策は必須です。この記事では、HULFTの概要とともに、障害対策のポイントについて解説します。
HULFTとは
HULFTとは、株式会社セゾン情報システムズが開発・提供するファイル転送用システムです。様々なデータを安全確実に転送するだけではなく、発生する前後の処理を統合的に行います。銀行や自動車業界など、多くの日本企業で導入され続けています。
以下では、HULFTの概要について紹介します。
HULFTの特徴
ファイル転送システムと聞くとFTPなどの単純なファイル転送の仕組みを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、HULFTはファイルを転送するだけでなく、転送に関わる様々な処理まで担うという特徴があります。ファイルの変換や圧縮、転送前後のファイルの整合性チェック、異常時の自動リカバリなど、「ファイルを転送する」という業務に付随する、通常であれば人が作業・チェックするような内容もHULFTが自動で行います。ファイル転送に加え、業務システムで必要とされる機能を搭載しているのが、HULFTの大きな特徴です。
HULFTを使えば、人が作業や確認をする工数を削減しながらファイル転送の品質を向上させることが可能です。そのため、多くの日本企業が業務の効率化と安定化のためにHULFTを採用しています。
HULFTにトラブルが発生すると
HULFTはシステムの特性上、夜間も各所と通信を行っています。HULFTはファイルの整合性確認機能などが提供されていますが、サービスそのものが止まってしまうと整合性確認はもちろん、ファイル転送自体もできなくなってしまいます。夜間にファイル転送機能が止まってしまうと、翌日の業務に支障が出るケースも少なくありません。翌朝出社した担当者の方はリカバリ対応に追われ、ファイル転送が行われなかったことによる業務停止が発生することも考えられます。
しかし、いつ起こるか分からない障害に対して、常に人の目で監視をするのは現実的ではないでしょう。常時監視のためにリソースを確保しておくのは、コスト的には無駄が多いと言えます。そこで、障害の監視と復旧を低コストで自動化するのが、HAクラスターなどの高可用性ソリューションです。HULFTの障害対策のポイントを、以下で紹介します。
HULFTの障害対策のポイント
HULFTのサービスを構成する主要なプロセス(デーモン)として、配信プロセス(snd)、集信プロセス(rcv)、要求受付プロセス(obs)が存在します(Windows、Linux共に)。
これらのプロセスをそれぞれ監視し、問題が検知されれば障害復旧が行われる処理が行われます。
このソリューションにより、オンプレ環境はもちろん、クラウド環境でもオンプレ環境と変わらないレベルの障害対策が実現します。具体的には、HAクラスターソフトのLifeKeeperおよびWSFC、そしてデータレプリケーションソフトのDataKeeperの構成で冗長化して障害対策を実現しています。
OS別の可用性対策
Windows環境
Windows環境の場合はWSFCが障害監視と切り替えを行います。但しAWSやAzureといったクラウド環境では、WSFCで必須要件の共有ストレージが使えません。
そこでサイオステクノロジーのDataKeeper(DataKeeper for Windows Cluster Edition)を組み合わせます。DataKeeperの作り出すミラー領域はWSFCに共有ストレージとして認識されます。
つまり、共有ストレージが使えるオンプレと同じ感覚でクラウド上でもWSFCのHAクラスターを構築できます。この構成で特筆すべき点は、DataKeeperで作り出すこの環境はMicrosoft社サポート対象の環境で、唯一共有ディスク不要でWSFC構成が可能なソリューションとして認知されている点です。
Linux環境
Linux環境の場合、当社のLifeKeeperによる冗長化構成となります。こちらのHAクラスターソフトでは必要なスクリプトの作成は不要です。当社にて作成したスクリプトをオプションリカバリキット(HULFT RecoveryKit)として提供しています。このオプションリカバリキットを使うことで、GUI画面上で容易にHAクラスターを構築できます。
また、冗長化構成ではサーバー間でデータの共有が必要になります。サイオステクノロジーのソリューションでは、スタンダードな共有ストレージを使う方式と使わない方式の両方に対応していますので、お客様のご要件に合わせた選択ができます。
費用例
当社高可用性ソリューションは、他の商用ソフトと比較して比較的安価に構成できます。Windowsの高可用性構成の場合に必要となる当社製品(AWSやAzureといったクラウド環境を想定)は下記のとおりです。
DataKeeper for Windows Cluster Editionx2ノードの費用(税抜メーカー定価)
製品 | ライセンス費用(円) | 年間保守費用(円) | 数量 | 合計(円) |
DataKeeper for Windows Cluster Edition | 390,000 | 97,500 | 2 | 975,000 |
※当社製品はノードライセンスです。
※2年目以降は保守費用のみが発生します。
※サブスクリプションライセンスについては下記からお問い合わせください。
※Linuxの高可用性構成と費用については、最下部のお問合せ先よりお問合せください。
まとめ
オンプレ環境が基本であるHULFTも、最近はクラウドへの移行ケースが増えつつあります。クラウド移行の際には、移行先でも障害対策は必要です。
クラウドは利用者が意識しなければ、障害対策は十分とは言えません。
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