サイオステクノロジーは2016年11月、SRA OSS日本支社、エンタープライズDB、沖電気工業、ユニアデックスのパートナー4社と「Higher Availability Solutionsコンソーシアム(以下、HASコンソーシアム)」を設立しました。インターネットを介したビジネスが主流となっている現在、ITシステムのわずかなダウンタイムが企業に大きな影響を与える可能性があり、リスクとなっています。そこでHASコンソーシアムでは、システム障害発生から業務の再開に要する時間を大幅に短縮化するための活動を実施しています。
今回は、ユニアデックスのソリューションビジネス開発統括部のシニアマーケティングマネージャーである石井広明氏、同マーケティングマネージャーである西川光葉氏のお二人にお話をうかがいました。
–まず、ユニアデックスについて教えてください。
石井氏:
ユニアデックスは、1997年に日本ユニシスのネットワーク構築事業部門、ハードウェアサポートサービス事業部門が独立分社した会社で、今年でちょうど創立20周年を迎えます。創立当初はネットワーク構築事業とハードウェアサポート事業をコアビジネスとしていましたが、その後、ソフトウェアのサポートサービス事業、設備設計事業、近年ではクラウド事業が日本ユニシスからユニアデックスに移管され、現在ではネットワーク、サーバー、ストレージから、OS、ミドルウェア、クラウド、回線、データセンターの設備まで、ICTインフラストラクチャにまつわるすべてのレイヤーの構築からサポートサービスまでを、マルチベンダー・ワンストップに提供できる企業として様々なお客様のシステムを支えております。
–お二人の所属部門やミッションを教えてください。
石井氏:
私たちの部署では、サーバー、ストレージといったハードウェアや仮想化、OS、ミドルウェアといったプラットフォームソフトウェアの新規商材発掘、商品企画、マーケティングを担当しています。なかでも私たち二人はLinuxを中心としたOSS(オープンソースソフトウェア)、HA(高可用性)、FT(無停止型)、ミドルウェア、サーバーを主に担当しています。
ユニアデックスのこれまでの高可用性実現への取り組み
–ユニアデックスは、これまでどのような業種、どのようなエリアでのミッションクリティカルシステムに関わってきたのでしょうか?
石井氏:
分社化前に遡ればユニバック、バロースのメインフレームの時代から数多くのミッションクリティカルなシステムに携わってきました。業種では金融、医療、製造、流通、公共系など、さまざまです。また、現在主流となっているオープン系のシステムにおいても当社は日本ユニシスのお客様を含め、数々のミッションクリティカルなシステムの構築、およびそのサポートサービスに携わっています。
–ミッションクリティカルシステムを支える高可用性技術、および製品としては、これまでにどのようなものを扱ってきたのでしょうか?
石井氏:
高可用性のエリアでは、これまでサイオステクノロジー社の「LifeKeeper」、「SSP(Single Server Protection)」の他、日本ストラタステクノロジー社の「everRun」、更には「VMware HA」、「MSFC(Microsoft Failover Cluster)」、NEC社の「CLUSTERPRO」などを扱ってきました。またミッションクリティカルなシステムではデータベース製品が要となることが多く、「Oracle RDBMS」をはじめ、「SQL Server」、「MySQL」、「PostgreSQL」、最近ではOracle RDBMSとの互換性が非常に高い、韓国ティーマックスソフト社の「Tibero RDBMS」も取り扱っています。
Fault Tolerant (FT)製品“everRun”の機能と特長
–everRunというと日本ストラタステクノロジー社のFault Tolerant (FT)製品ですが、ユニアデックスは日本ストラタステクノロジー社とのお付き合いは長いのでしょうか?
西川氏:
everRun自体は、元は米国Marathon Technologies社が開発した製品でしたが、当社は2007年から取り扱いを開始しており、熟知しています。また現在、everRunの開発、販売をしている日本ストラタステクノロジー社とは、米Stratus Technology社がMarathon Technologies社を買収した2012年からのお付き合いです。
–everRunはFTのソリューションになると思いますが、その概要と特長を教えてください。
西川氏:
2台1組のサーバーをワンセットにして、everRunのソフトウェアをインストールすることで、CPU、メモリ、ディスク、NIC(Network Interface Card)、すべての同期を取ることが可能になります。そのため、万一片方のサーバーでハードウェア障害が発生しても、もう片方のサーバーが処理を継続できます。業務に支障を与えず、お客様から見るとダウンタイムゼロで業務を継続できるソフトウェア製品です。
everRunを搭載するハードウェアはユニアデックスで動作検証を行った機種の中からお客様に選んでいただいています。もちろん、お客様のご要望で新たな機種を検証するケースもあります。当社はマルチベンダーに対応していますので、国内外の各種サーバー製品が利用でき、保守にも対応します。
–FTといえば、かつてはFTに特化したメーカーが提供する専用のハードウェアを使用するため非常に高価というイメージがありました。でも、everRunは高価なイメージを払拭していますね。
西川氏:
everRunは低コストで簡単に導入できることが特長です。2台のサーバー間では、サーバー内蔵のディスクをミラーリングしますので、高価な共有ディスクは不要です。そのため、かなりの低価格を実現しています。また、運用もシンプルなので、専任の技術者がいないような病院、工場や物流倉庫への導入実績も豊富です。
–かつてのFTは独自のOSが搭載されていて、運用にも職人技が求められました。それがeverRunでは一般的なOSが動くわけですね。
西川氏:
はい、everRunが提供する仮想環境上でWindowsでもLinuxでも動作します。
FT製品を導入しても、ミドルウェア、アプリケーション障害には対応が必要
–FTは、通常ハードウェア障害のみに対応しますが、everRunはソフトウェアの障害も含めて対応できるのでしょうか?
石井氏:
いえ、FTは基本的にはハードウェア障害のみに対応できるソリューションです。たとえばアプリケーション、ミドルウェア、OSがフリーズした場合、その障害を検知できません。たとえ、サーバーを他方に切り替えたとしても、2台のサーバーはメモリもCPUも完全に同期していますので復旧はされません。
–FTはハードウェア障害に対して完全に無停止を実現できますが、アプリケーションやミドルウェアの障害に関しては何らかの対策が必要になるということですね。everRunを利用するような方々は、極めて高い可用性を欲していると思うのですが、ソフトウェアの障害についてはどう考えているのでしょう?
石井氏:
everRunのみを導入している場合、アプリケーションやミドルウェアの障害については対策がされていないか、あるいは監視ツールを使用して、アラートが上がってきたら人手を介した作業で対応するケースが多いようです。ただ、ソフトウェア障害には、どう対応すればいいか分からない、どういう対策製品があるのか分からないというケースも多いと思います。
最近、製造系のお客様でそういったご依頼がありました。アプリケーションが止まった瞬間に、業務が停止してしまう。そこを人手を介して対応しているとダウンタイムが非常に大きくなるので、自動的に検知して再起動するようにして欲しいというものでした。
「より」高い可用性を目指したユニアデックスのソリューションとは
— ユニアデックス社には、サイオステクノロジーが2016年11月に、「より」高い可用性を目指して立ち上げたHigher Availability Solution(HAS)コンソーシアム にもご参加頂いています。『PostgreSQLとLifeKeeperファミリーの製品を使い、「ACT/STBY型の一歩上を行く可用性」を実現する』というコンセプトを掲げていますが、実現する手段は、参加各社の得意分野を活かした方法になると期待しております。ユニアデックスでは、どのようなソリューションをお考えでしょうか?
石井氏:
システムの要件のひとつとして、ダウンタイムがゼロに近いFTが求められるケースがあります。でも、それを優先すると、OS、アプリケーション、ミドルウェアの障害対応の部分が軽視されがちです。そこで、当社では「everRun」とサイオステクノロジーのアプリケーション保護ソフトウェアであるSingle Server Protection(SSP) の組み合わせをソリューション化しました。
everRunとSSPの組み合わせは、マルチベンダー・ワンストップ対応が可能なユニアデックスだから実現できるソリューションです。
これによりFTとHAを組み合わせて、アプリケーション、ハードウェア、ネットワークのすべてを監視しつつ、ハードウェアに関してはダウンタイムゼロで、ワンストップでお客様に安心、安全を提供するものになります。
また、PostgreSQLを使った検証も行いましたが、特に問題なく動作しました。
–システムがダウンする原因は、ハードウェアの故障、システムソフトウェアの不具合、アプリケーションの不具合、性能や容量の不足、設定・操作ミス、そして不慮の事故など多岐に渡り、必ずしもハードウェアの障害だけではありません。また、実際にサーバーの運用後に発生した障害では、2012年の調査ではハードウェア障害が1位でしたが、2014年の調査ではアプリケーションなどの障害がハードウェアの障害を上回っています。
ユニアデックスが今回everRunとSSPを組み合わせ、さらに検証済みのハードウェアを提示してサポートまで一括して提供されるということは、高価なFTのシステムを組まずとも、現代のFTとHAの仕組みを使って、「超」高可用性のシステムを実現するための手段を提供されるという試みかと思います。今後、世の中の「より高い可用性」への要求度は高まると思いますか?
石井氏:
これまでFTを導入されているお客様、あるいはHAのみを導入されているお客様はいらっしゃいますが、ハードウェア、ソフトウェアを含め「システム全体としてのダウンタイムを限りなくゼロにする」という面では一部、目をつぶらなければならない環境にあったと思います。今回のFT、HAの良いところを組み合わせた、ユニアデックスならではのソリューションは「より高い可用性」を必要とするお客様の課題を解決できると考えています。
西川氏:
システムが数分停止しただけでも、大きな損失につながるような業務システムが多くなっています。そういった点でも、より高い可用性への要求は増えています。
昨今では、ハードウェアの品質が向上したことでハードウェア障害に起因する業務停止は減少傾向にあるとはいえ、ハードウェア障害はゼロではありません。またシステム全体のダウンタイムを限りなくゼロに近づけるためにはソフトウェア障害への対策も必要です。そのためハードウェア、ソフトウェアの両方の障害に対応した高可用性ソリューションへの要望が増えています。
石井氏:
everRunとSSPを組み合わせることで、ハードウェアのダウンタイムをゼロにでき、ソフトウェア障害についても復旧を自動化できます。たとえば、夜間にソフトウェア障害が発生したとしても自動的に復旧することで、そのダウンタイムを短く出来、夜間の緊急対応の必要もなくなります。
–確かにソフトウェア障害への対策を何もしなかったら、保守の方々にまったく検知されずに一晩停まってしまうようなことにもなりかねないですね。
西川氏:
everRunとSSPの組み合わせは、いま世の中にある仕組みの中でも、より高いレベルの可用性を提供できると思います。
–今後はeverRunとSSPを、どのようなユーザへプロモーションしていこうと考えていますか?
石井氏:
現在FTをご使用されている既存のお客様へ提案していきたいと考えています。特に製造系、医療系のお客様にはニーズがあると考えています。
西川氏:
ミッションクリティカルな環境に導入されるアプリケーションを販売されているSIer様との協業についても進めていきたいと考えています。
–ぜひ協力して、HASコンソーシアムのメッセージを世の中へ広めていきましょう。本日はありがとうございました。
より高いレベルの可用性を実現するSSPについて、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
石井 広明 氏
西川 光葉 氏 ユニアデックス株式会社
ユニアデックス株式会社について 日本ストラタステクノロジー社「everRun」について |