「万が一の障害のときにサービスの停止をできるだけ短く」――これは企業や団体の情報システムにかかわる人たちすべてに共通する思いだろう。中でも、金融機関のインフラを担うシステムでは、そのハードルが一段と高くなる。大和証券グループのシステム開発から運用までを手がける大和総研でも、その意識は当然のことながら非常に高い。
サービス停止が許されない金融機関のシステムインフラ
「金融機関のシステムインフラはサービス停止が許されません。障害時のシステム停止時間をできるだけ短くすることは、関係者の共通認識です」と、大和総研 システムマネジメント本部 オープンシステム開発第一部 課長代理の福島俊祐氏は語る。福島氏が所属するオープンシステム開発第一部は、大和証券グループ向けのインフラのOSやミドルウエアの設計、構築を進める部署である。
大和証券グループのシステムは、ハードウエアのレイヤーにVMwareをベースにした仮想環境があり、その上にOSやミドルウエアのレイヤーが重なる構成をとる。ハードウエアのレイヤーでは、VMware HA (High Availability)による可用性は確保されるがハードウエアレベルのみではなく、ミドルウエアやアプリケーションレベルでの可用性も必要となってくる。
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福島氏は、「金融インフラなので、確実に稼働系から待機系に切り替わることはもちろん、障害時の切り替わりの速さや、どういった状況では切り替えて、こんなときには切り替えないといった、詳細な条件設定をできることも冗長化設計では求められました」と振り返る。
一方、大和証券グループのシステムでは“標準化”の概念の適用が進んでいた。個別のシステムごとに利用するソフトウエアを選定するのではなく、大和証券グループのシステム全体で利用するソフトウエア、バージョン、設計を共通化することにより、すべてのシステムの品質を一定に保つという考え方だ。クラスターソフトの選定でも、標準化を前提にした選考が求められた。要するに、大和証券グループのシステム全体で導入できるだけの機能や要件を満たすソフトウエアを選ぶ必要があったのである。
様々な要件への対応と社内実績に着目
実際、検討時に挙げられた要件は多岐にわたった。
オープンシステム開発第一部 開発五課長 副部長の小松優子氏は「クラスターソフトの選定によって、稼働するハードウエアに制約をかけることはできません。ベンダーロックインがなるべく少ない製品を選ぶ必要がありました」とその要求を語る。
仮想環境での動作のサポートや、仮想環境での利用に適したライセンス形態、初期費用、運用費用を含めたトータルコストも当然の評価対象になった。
その上で、詳細な要件も積み上がっていた。過去の障害事例への対策が仕様に含まれているか、障害検知時間、検知条件、障害時の復旧動作のカスタマイズは可能か、障害検知の監視対象が十分か、といった製品仕様の観点に加え、日本語での十分なナレッジが提供されているか、各社ソフトウエア、ハードウエアベンダーとの関係を踏まえて障害時のサポート体制が十分か――と要件は幅広い。
福島氏は、「金融インフラのシステムで利用するクラスターソフトですから、安定稼働が第一優先です。そのため、十分な実績がある製品を選ぶ方向性があり、特に3社の製品が有力な候補でした。その中の1つが、サイオステクノロジーのクラスターソフトであるLifeKeeperでした」と語る。
標準化で採用するクラスターソフトの選定時に、すでに稼働中のシステムのいくつかで、LifeKeeperが導入されていた。「先行してLifeKeeperを導入したシステムで、障害時の切り替えは問題なく動作していた、という社内実績は、最終的に採用ポイントの1つになりました。」(福島氏)。
社内実績に加え、特定のソフトウエア、ハードウエアとの組み合わせに限定することなく保守サポートを受けることができるといった点が、機能面に加えた選考のプラス評価となった。さらに、LifeKeeperのライセンス形態が、仮想サーバー向けであったことも後押しした。
「クラウドで利用すると、物理サーバーごとのライセンスではコストがかさみます。仮想サーバー単位で使った分だけ支払うライセンス形態ならばコストを抑えられます」(福島氏)。
こうして、LifeKeeperが大和証券グループの標準のクラスターソフトとして選定された。
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