【事例】地域の中核病院で、電子カルテのデータ保護と災害復旧環境を実現

     医療機関の災害対策については、阪神・淡路大震災の後、当時の厚生省健康政策局から各都道府県に向けた通知1や、災害対応マニュアル作成手引2が示されていました。

     しかし、平成23年の東日本大震災では、広域におよぶインフラの破綻によって多くの病院施設で「想定外」の事態が起こり、業務が滞ったのは記憶に残るところです。

     医療機関が災害時に期待されることは、病院機能を維持した上で、被災患者を含めた全ての患者診療を継続することです。そのため、医療機関のシステムは、病院機能の損失を最小限にとどめて早急に復旧させること、継続的に被災者の診療にあたれるような事業継続計画(BCP)を考慮しなければなりません。

    今回は、地域の中核病院で、患者の診療記録を電子データとして管理する重要な病院システムの一つ、電子カルテシステムの可用性の担保と同時に、データ保護も実現した、米国のソリューション事例をご紹介します。

    病院ITチームの要求する信頼性と堅牢性を、サイオスはどのように満たしたのでしょうか?

     


    「サイオスの製品は簡単に我々のデータ・レプリケーション要件を満たし、ダウンタイムを最小化してくれるので、患者の方々に対して、最高レベルのケアを継続的に提供できます。」
    – スコット・リブセイ、 キャロル・ホスピタル・センター ネットワーク・サービスチーム

    carroll-hospital-centerキャロル・ホスピタル・センターは、民間の非営利医療センターで、38の医療専門領域に渡り、400名を超える医師が在籍しています。コミュニティに貢献することを目的に、コミュニティ自身によって設立された同センターは、コミュニティの取締役会により運営管理されており、メリーランド州キャロル郡に、質の高い包括的医療サービスを提供することを使命としています。

    課題

    キャロル・ホスピタル・センターは、コミュニティ内の人々に最高品質の医療を提供することに尽力しています。またこの組織は、Horizon Patient Folderと呼ばれる、McKesson社製アプリケーションで管理される電子カルテシステムの可用性に大きく依存しています。同センターにはシステムの中心となるデータ処理系システムが1つしかないため、サイト全体の災害時に電子カルテシステムの可用性を確保するには、信頼できる包括的な災害復旧ソリューションが必要でした。

    キャロル・ホスピタル・センターのネットワーク・サービスチームのスコット・リブセイは、災害または予定外のダウンタイムが生じた場合、チームが手動フェールオーバーを実施するのに必要なリソースを割り当てるまで、最低2時間のシステムのダウンタイムが必要になると見積もりました。 このプロセスには時間がかかり、極度のシステム障害が発生した場合には、完全なシステムの可用性を回復するまで、7時間もかかる可能性がありました。 患者のケアが中断しないようにシステムを整えておきながら、手動でのオペレーションに逆戻りすることは多くの工数を必要とし、設備全体にかなりの追加リソースが必要となります。

    リブセイは「ダウンタイムが予定されていてもいなくても、その1分1分が、我々にとっては非常に重要です。コミュニティの主要医療センターとしての評判を維持するためには、電子カルテシステムとして最高レベルの可用性を確保できる、信頼性と堅牢性を兼ね備えたITインフラストラクチャーを持つことは不可欠でした。」と付け加えました。

    年間で315,000名を超える入院患者と外来患者が医療やコミュニティプログラムで訪れる病院にとって、ダウンタイムは重大な課題です。キャロル・ホスピタル・センターは、システムの迅速なフェールオーバーとデータ複製ニーズを満たす、包括的災害復旧ソリューションを導入することを目指しました。

    解決策

    スコット・リブセイ率いるネットワーク・サービスチームは、コスト効率が高く、包括的な災害復旧構成を設計すべく、システム要件として、物理と仮想の混合環境を完全に保護することと、病院の既存のMcKesson Horizon Patient Folder EMRアプリケーションとのシームレスな統合とを設定しました。

    そして、Windowsクラスタリングの既存機能を考慮して、Microsoftクラスターサービスと包括的な災害復旧ソリューションの組み合わせなら、センターのニーズを満たすのに必要な、別個の2台のサーバー間での集中的なデータ複製が可能になるだろうと結論付けました。またこのソリューションは、災害シナリオで単一障害点(SPOF)となるSANの潜在的なリスクを回避するのにも役立ちます。

    選定に当たり、比較検討された他の製品は、データ複製に関する要件を満たすほど堅牢ではなく、バックエンドアプリケーションとの統合ができませんでした。ヘルスケア提供者のITパートナーは、サイオスの DataKeeper Cluster Edition(以後、DKCE)を推奨しました。「キャロル・ホスピタル・センターには、高可用性とデータ複製の両方を満たす包括的なデータ復旧ソリューションが必要でした。サイオスには、優れた災害復旧技術と、卓越した事業継続の専門知識があり、彼らのニーズを満たす唯一のプロバイダーでした 」と、キャロル・ホスピタル・センターのCAS Severnアカウントエグゼクティブである クリスティーン・ミロサビッチは話しています。

    サイオスのスタッフの支援を受けた実装作業はスムーズに進み、所要時間はわずか6時間未満でした。続くセンターのサーバー構成の徹底的な評価と、サイオス認定エンジニアによって実施された試験の結果、ネットワーク・サービスチームは、サイオスのSANlessクラスターと DKCEソフトウェアの組み合わせが、災害復旧、性能、高可用性に対する彼らの基準のすべてを満たしていることを確認しました。

    トラブルなく、迅速に災害復旧ソリューションを導入できたおかげで、ネットワーク・サービスチームはMcKessonと協力し、クライアント構成を含めた電子カルテシステムが、確実に運用できることを確認する時間とリソースを確保することもできました。これには、プライマリ・データセンター内に1台目のノード、遠隔地に2台目のノードを配置し、それらの間を直接ファイバーチャネルで接続した、クラスター構成のデータベース構築作業も含まれています。システムのフェイルオーバー試験では、ネットワーク・サービスチームが、システムのフェイルオーバーとフェイルバックをすばやく、かつ容易に行えることを確認しました。

    リブセイは「過去に他の災害復旧ソリューションを使用したことがあります。でも、どのソリューションも、DKCEで対応可能なアプリケーションレベルまでの幅広い問題に対しては、対応することができませんでした。サイオスは簡単に我々のデータ・レプリケーション要件を満たし、ダウンタイムを最小化してくれるので、患者の方々に対して、最高レベルのケアを継続的に提供できます。」と述べています。

    導入効果

    キャロル・ホスピタル・センターは、電子カルテシステムに代表される、ミッションクリティカルなアプリケーションを常に利用可能な状態に保つよう、包括的な災害復旧ソリューション環境を備えました。以前のスタンドアロンの電子カルテシステムとは異なり、リブセイのITチームは、もう手動フェイルオーバーの実施やクライアントの再設定に時間を浪費することはありません。かわりに、システム障害や災害時でも、1分未満で自動フェイルオーバーが完了します。サイオスの DataKeeperは、リアルタイム、ホストベース、ブロックレベルでの絶え間ないレプリケーションによって、電子カルテシステムへの継続的なアクセス環境を実現しています。

    サイオスの構築サービスが提供した専門知識とテスト作業の実施により、McKessonのHorizon Patient Folderのように、ミッションクリティカルなアプリケーションの可用性を保つために必要なベストプラクティス、ノウハウの伝達や理解にもつながりました。 また、災害復旧ソリューションの導入をスムーズに実施することによって、潜在的に高コストとなりうる導入作業中のダウンタイムを避けることにも寄与したといえます。

    リブセイの言葉を借りれば「DKCEソフトウェアの実装支援でサイオスの認定エンジニアが現場にいてくれたおかげで、私たちの実装に関して思いつく限りの現場の課題をテストしたり、日々の運用管理業務に関するトレーニングを受けられる状態で、最適な構成を検討し、構築することができたのです」。

    DataKeeper Cluster Editionは、間接費やリソースの観点から見れば、多額な投資をせず、1つのサイトから別のサイトにフェイルオーバーするというセンターのニーズを満たしています。また患者の重要な電子カルテに対しては、常にアクセス可能で災害時にも保持される状態を作り、ひいては最高品質のケアを継続して患者に提供する、という病院の使命にも貢献しています。

    最後に、リブセイのチームは、病院のスタッフが患者に提供するケアのレベルを向上し続けることを支援するために、時間とリソースを集中することができるようになりました。「サイオス、およびCEOのジョン・セルヌルカ、CFOのケビン・ケルブリー両氏からのサポートがなければ、多額の間接費とリソースを要することなく、堅牢なデータ・レプリケーション機能と自動フェイルオーバーを兼ね備えた、包括的な災害復旧ソリューションにたどり着くことはできなかったでしょう。」と、リブセイは締めくくりました。


    注:
    1) 「災害時における初期救急医療体制の充実強化について」(平成24年3月21日医政初第0321第2号厚生労働省医政局長通知)
    www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001j51m-att/2r9852000001j5gi.pdf

    2)厚生労働省医政局指導課長 (平成25年9月4日)「病院におけるBCPの考え方に基づいた災害対策マニュアルについて」
    www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000089048.pdf

    SNSでもご購読できます。