SIOS Technology、2022年を予測:ディザスターリカバリーがマルチクラウドへの移行を加速

    SIOS Technology カスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデント Cassius Rhue
    ※この記事はVMBlogに掲載された記事を翻訳されたものです。本記事の原文はこちら

    クラウドコンピューティングは、今後も多くの企業にとってIT戦略の中核であり続けると思いますが、2022年には多くの企業がシングルクラウド戦略を超えて拡大することが予想されます。最初にクラウドに参入した企業は単一のクラウドベンダーで統一する傾向があるというのは、驚くことではありません。

    2022年に拡大するクラウドは?

    Amazon Web Services Elastic Cloud(AWS EC2)は、IaaS(Infrastructure as a Service)の世界で市場開拓の先駆者としてのリーダー的地位を維持しており、2021年第2四半期の世界のクラウドインフラ支出の31%を占めています。Microsoftに慣れ親しんでいた企業は一般にAzureを好み、2021年の世界のクラウドインフラ支出の22%を占めています。

    一方、Google Cloud Platform(GCP)は、全世界のクラウドインフラ支出の8%を占めていますが、2022年には、次のような2つのケースでGCPの採用が拡大すると予想しています。AWSやAzureを使用している企業は、より多くのクラウドを経験することで、シングルクラウドの標準化にとどまらず、Googleの先進的なAI、ML、複雑な分析ツールを活用するために、Googleを自社のクラウドコンピューティングミックスに加えるケースが増えてくるでしょう。また、クラウドベースのディザスターリカバリー(DR)オプションを探している企業は、別のクラウドに複製することで、クラウドベースの高可用性(HA)構成のDR保護を強化することを検討するでしょう。

    アプリケーション特化型のマルチクラウドの課題を克服する

    多くの企業は、マルチクラウド戦略を偶然採用しています。マルチクラウド戦略は、買収による拡大の副産物であったというケース、また、クラウドベンダー固有の機能を利用するために、IT部門で独自の意思決定が行われ、アプリケーションが突然異なるクラウドで実行されるようになったケースもあります。たとえば、GCPにはアナリティクスのワークロードに適した機能があるので、それらのワークロードをGCPで実行することは理にかなっています。しかし、どちらのケースでもこの経験は有益で、企業はマルチクラウドのアプローチが新たな選択肢を生み出すことに気づいてきています。個々のアプリケーションのニーズ、運用上の要求、高可用性の要件に応じて、異なるクラウドサービスを選択することができるのです。

    マルチクラウドの採用が意図的か偶発的かにかかわらず、ITチームは複雑さを増すことなく、ダウンタイムやデータ損失からアプリケーションを保護したいと考えています。AWS、Azure、GCPはいずれも、インフラの高可用性(HA)を提供しています。つまり、仮想マシン(VM)のアップタイムを 99.94%というサービスレベル契約(SLA)で保証していますが、これはアプリケーションレベルの高可用性を保証するものではありません。つまり、厳密にはVMが動いていてSLAに準拠していても、組織が重要なアプリケーションを実行できない可能性があるということです。クラウド環境では、クラスターノードが異なる可用性ゾーン(AZ)に配置されていても、人為的なミスによってアプリケーションのサービスが停止した例がいくつか存在します。

    このような脆弱性を克服するために、企業は、クラウド内のアプリケーションやデータの適切な複製を保証できるだけでなく、必要なすべてのユーズケースに対応できるHAおよびDRソリューションを提供できるHAベンダーを選ぶという戦略を採用しています。つまり、AWS、Azure、GCP上で稼働するWindowsやLinuxのOSシステムから、アプリケーションやデータを自動的に複製できるようにしているのです。

    クラウド全体の障害や地域的な災害が発生した場合でも、重要なアプリケーションやデータをオフラインにするわけにはいかないという企業にとっては、マルチクラウドDRソリューションは適しています。

    DRに関するマルチクラウドの課題を克服する

    マルチクラウドDRソリューションの構築にはコストがかかり、複雑です。そのため、企業はマルチクラウドDRソリューションでサポートするアプリケーションとデータを選択することになります。そして、重要なアプリケーションやデータをサポートするプライマリークラウドインフラを可能な限り忠実に反映したDRインフラをプロビジョニングします。多くの企業にとっての課題は、2つのクラウドインフラを同期させ、災害によってプライマリークラウド環境がダウンしたり脅威にさらされたりした場合に、クラウド環境間のフェイルオーバーを容易にするDRサービスの選択と設定にあります。

    DRソリューションでは、バックアップまたはログ配布アプローチ(失われたアプリケーションとデータベースを復元する前にITが代替サーバーを調達して構成する必要があります)に依存するのではなく、組織はクラウドインフラ全体で重要なアプリケーションやデータを複製できるDRソリューションを構築するようになると予想されます。その場合、クラウド全体で大規模な障害が発生した場合でも、重要なアプリケーションとデータの複製されたコピーを別のクラウドDRで使用できます。

    一部の企業では、マルチクラウドDRソリューションをプライマリークラウドインフラと同じリージョンに構成するようになるでしょう。これにより、DRソリューションの高速同期ファイル転送サービスを利用して、一方のクラウドから他方のクラウドへデータを複製できるようになります。一方、クラウド間の通信速度は低下する可能性があるため、DRソリューションは非同期データ転送を使用して本番データをセカンダリークラウドインフラに複製するように構成されるようになると思います。

    非同期データレプリケーションは、同期データレプリケーションと比較して速度が遅く、DRクラウドのデータが本番クラウドのデータと数秒ずれてしまうような状況が発生する可能性があるため、そのリスクを、地理的に異なる地域にDRインフラを構築することで得られる付加的なメリットと比較して検討します。このアプローチを採用した場合のメリットは、プライマリークラウドインフラがダウンしても、特に災害の原因が地域的なものであれば、緊急時に使用することを想定していたセカンダリークラウドインフラがダウンすることはないという点です。