JP1とは?サービス内容や運用ノウハウ・障害対策を徹底解説

    みなさんこんにちは。
    東日本のプリセールスの西下(にしした)です。

    前回は基幹系システムの第一弾として、SAPにフォーカスした、当社の高可用性ソリューションについてお伝えしました。今回は第二弾として、JP1にフォーカスし、今後求められる対策についてご紹介いたします。

    当社にとってJP1は、以前からオンプレ環境で多数実績のある構成ですが、最近の傾向としてJP1をオンプレからクラウドに移行される案件が顕著に増えています。こうしたトレンドを含め、JP1の概要やサービス内容、運用方法や障害対策にいたるまで、徹底解説します。

    JP1とは? 

    JP1とは、日立製作所が開発した統合システム運用管理ソフトウエアです。1994年に発売され、あらゆる企業のIT機器管理・運用のサポートを実施してきました。サーバーやネットワーク機器を複数台利用していると、それぞれを運用・メンテナンスをするためには各機器の状況を確認したり、ログを参照したりしなければなりません。しかし、JP1があれば、1台のモニターで全ての機器を管理できます。

    JP1は、システムの稼働監視や業務の自動化、IT資産管理、ネットワークなどのインフラ管理を統合的に実現します。例えば、サーバーをまたいだ業務の自動化などもでき、一台ずつ設定をする手間が省けるのです。

    また、情報の外への持ち出しに対するセキュリティ対策も提供しています。秘文や暗号化の設定も一括でできるため、パソコンやサーバーに対し1台ずつ暗号化を設定する必要はありません。障害が起きてしまった場合でも、要因の特定を手助けする機能もあります。レポート出力もでき、緊急会議を開く際に関係者に配る資料を一から作る手間も省けます。

    動作環境や条件が合えば、オンプレだけでなく、クラウドプラットフォーム上でも利用可能です。JP1が提供できるサービスは多岐に渡りますが、それぞれの機能を選択し、構築できるようになっています。余分なコストを抑えながら、運用に合わせた導入を検討できるでしょう。

    JP1サービスの種類・3つの柱

    JP1は、「モニタリング」・「コンプライアンス」・「オートメーション」といった、主に三つの視点からシステムの運用をサポートします。それぞれについて解説します。

    JP1サービスの種類・3つの柱の図

    2-1.モニタリング(JP1/IM・JP1/PFM・JP1/NNMi など)

    システムの運用を止めないためには、全体の稼働状況をモニタリングしながら、素早く異変に気付くことが重要です。

    JP1には、視覚的に分かりやすいビジュアル監視画面と、各機器のログをまとめたイベントコンソールが用意されています。異常が発生した場合は即座にアラートを検知し、緊急度まで判断します。あらかじめ登録した関係者へメール通知したり、障害の要因や影響の分析をしたりすることも、JP1の特徴です。

    異常検知だけでなく、日頃のパフォーマンスも分析し、将来のキャパシティプランニングも行います。ネットワークはSNMPを利用した監視を実施し、表示された構成図から問題個所をすぐに確認できるでしょう。システムリソースや、プロセス状態をレポートとして出力できるため、原因の分析時などにも活躍できる機能が付いています。

    2-2.コンプライアンス(JP1/ITDM2・JP1/秘文 など)

    JP1は、パソコンやサーバーに点在するソフトウエアまたはハードウエアなどのIT資産を一元管理できます。また、セキュリティ対策状況の確認や各機器の操作ログの取得により、コンプライアンスの徹底をサポートします。

    情報を外に持ち出す際にも、厳重なセキュリティ機能でデータを守るのが特徴です。
    例えば、パソコンやサーバーへのUSBメモリやスマートフォンの接続をシャットアウトし、外部媒体へのデータコピーを制御できます。もし情報を持ち歩くのであれば、秘文機能でしっかり暗号化するため、仮に外部へ情報が漏れたとしても中身は見せません。ファイルの閲覧停止機能を用いれば、情報の不正利用や拡散を防止します。

    このように、資産を管理しつつ、情報漏えいの危機からデータを守ります。JP1の機能がもたらす効果は、システム上のセキュリティ対策だけではありません。これらを使用する組織の、セキュリティリテラシーの向上が狙えます。

    例えば、システムを使いこなすためには、運用ルールを決めなければなりません。パソコンなどの持ち出し管理簿の徹底や、上長への承認を必要とするなどのルールを徹底することで、組織全体のセキュリティに対する意識が向上するでしょう。

    2‐3.オートメーション(JP1/AJS3・JP1/AOなど)

    全てのシステムにそれぞれタスク指示を設定するのは、手間がかかります。サーバー間をまたがった自動化を検討したいのであれば、オリジナルのツール作成も必要になるかもしれません。

    JP1では、システム全体の制御を実現させ、複雑な運用オペレーションを自動化します。実行指示に行う画面もシンプルであるため、直感的に操作をしやすいでしょう。細かいスケジューリング機能で、あらゆる業務の自動化をサポートします。実行状況が一目でわかる画面で管理し、フローチャートを描くように業務運用の定義も簡単に設定できます。

    システム全体のバックアップを一元管理し、データを損失させない運用も可能です。リモート拠点にデータを送信できるなど、BCP対策も備えています。これらの操作はシステム全体に負荷をかけてしまうため、比較的業務が行われていない時間帯(夜間など)に実施することがほとんどです。

    JP1では、こういったシステムのメンテナンスや負荷のかかる自動業務を、細かく動作を指定しながら進められます。

    JP1における障害対策の運用例

    JP1には多くの機能がありますが、前述の通り障害対策として冗長化する要件は、自動ジョブ実行スケジュール管理製品の「AJS3」に集中しています。

    下図はLinux環境の例ですが、各業務サーバーで動いているJP1/AJS3 AgentとこれらのAgentを管理するJP1/AJS3 ManagerをHAクラスターソフトのLifeKeeperを使って冗長化しています。

    JP1 ジョブ運用管理サーバーの冗長化構成図

    例えば夜間にJP1/AJS3が障害を起こしてもしも誰も気づかなかった場合、朝出社した担当の方は大慌てで流すべき処理のリカバリに追われ、業務は大きな混乱をきたしてしまいます。

    そのような際に、JP1/AJS3を冗長化していれば、夜間に業務を停止させることはないでしょう。運用は回っている状況なのでひとまず安心です。担当の方は、朝出社した後にじっくり原因究明と対策を練られます。このソリューションにより、オンプレ環境はもちろん、クラウド環境でもオンプレ環境と変わらないレベルの障害対策が実現します。

    具体的には、HAクラスターソフトのLifeKeeperおよびWSFC、そしてデータレプリケーションソフトのDataKeeperの構成で冗長化して障害対策を高めています。

    Windows・Linux環境での可用性対策

    システムの運用を少しでも停めてしまうのが問題であれば、可用性対策は必須です。対策はOSごとに異なります。代表的なOSであるWindowsとLinuxを例に用いて、解説します。

    4‐1.Windows環境

    Windows環境の場合はWSFC(フェールオーバークラスタリング)が障害監視と切り替えを実施します。WSFCとは、マイクロソフトが提供するWindows Serverの機能の一つです。連なった複数のサーバーを、一つのサーバーに見立てて管理できるようになります。一台が停止しても、残りの機器で運用が可能です。

    但しAWSやAzureといったクラウド環境を考えた時、クラウド環境ではWSFCでは必須要件の共有ストレージが使えません。そこで当社のDataKeeper (DataKeeper for Windows Cluster Edition)を組み合わせます。DataKeeperの作り出すミラー領域はWSFCに共有ストレージとして認識されます。

    つまり、共有ストレージが使えるオンプレと同じ感覚で、WSFCのHAクラスターをクラウドの上で構築できます。この構成で特筆すべきは、Microsoft社サポート対象の環境で、唯一共有ディスク不要でWSFC構成が可能なソリューションとして認知されている点です。※なお、JP1のサポート要件については、日立製作所またはJP1販売パートナーに構成をご確認ください。

    当社高可用性ソリューションでは、他の商用ソフトと比較して比較的安価に構成できます。Windowsの高可用性構成の場合に必要となる当社製品(AWS、AzureやGCPといったクラウド環境を想定)は下記のとおりです。

    DataKeeper for Windows Cluster Editionx2ノードの費用(税抜メーカー定価)
    DataKeeper for Windows Cluster Editionx2ノードの費用(税抜メーカー定価)※当社製品はノードライセンスです。
    ※2年目以降は保守費用のみが発生します。
    ※サブスクリプションライセンスについては下記からお問い合わせください。

    4‐2.Linux環境

    Linux環境の場合、当社のLifeKeeperによる冗長化構成となります。

    一般的なHAクラスターソフトでは必要なスクリプトの作成は不要です。当社にて作成したスクリプトをオプションリカバリキットとして販売しています(上図の「Generic ARK for JP1/AJS3 Agent/Manager」が該当。製品は無償提供(保守は有償))。オプションリカバリキットを使うことで、GUI画面上で容易にHAクラスターを構築できます。

    また、冗長化構成ではサーバー間でデータの共有が必要になります。当社ソリューションでは、スタンダードな共有ストレージを使う方式はもちろん、使わない方式の両方に対応していますので、お客様のご要件に合わせた選択ができます。
    ※なお、JP1のサポート要件については、日立製作所またはJP1販売パートナーに構成をご確認ください。

    <概念図(データレプリケーション構成)> ※クラウド/オンプレに対応
    <概念図(データレプリケーション構成)> ※クラウド/オンプレに対応
    <概念図(共有ストレージ構成)> ※オンプレに対応
    <概念図(共有ストレージ構成)> ※オンプレに対応

    まとめ

    オンプレ環境が多いJP1も、最近はクラウドへの移行ケースが増えつつあります。クラウド移行の際には、移行先でも障害対策は必要です。

    クラウドは利用者が意識しなければ、障害対策は十分とは言えません。
    多くの実績のある当社ソリューションもっと詳しく知ってみませんか?

    JP1+LifeKeeper/DataKeeper 構成パターンと事例 ダウンロード

    JP1/AJS3 を冗長化するHAクラスター構成パターンや冗長化する為の構築ガイドなどの資料も公開しております

    JP1+LifeKeeper/DataKeeper 構成パターンと事例のダウンロード資料画像

    資料目次

    1. LifeKeeperとは
    2. JP1冗長化の代表的な構成例
    3. 物理・仮想環境での構成例
    4. クラウド上での構成例
    5. 導入事例
    6. お問い合わせ
    7. 会社概要

    JP1・HULFT・DataSpider まるっと保護を実現するために

    組み合わせて使われることも多いJP1・HULFT・DataSpiderをまとめて保護するケースを、製造業を元にしたユースケースでご紹介します。

    資料目次

    1. JP1・HULFT・DataSpider の動き
    2. システム停止で起きる影響
    3. システム障害による事業停止を防ぐには?
    4. LifeKeeper / DataKeeper を使ってまるっと保護!
    5. まるっと保護を実現する構成例
    6. 一つのソフトウェアでまるっと保護する事のメリット
    7. 構築の為の技術情報

    LifeKeeperとJP1の評価キット 

    また、JP1とLifeKeeper for WindowsをAWS上で冗長化するための評価キットを日立製作所様のサイトにて提供しております。ハンズオントレーニングで使った詳細な手順書がついておりますので、JP1案件の構成検証などにぜひお役立てください。

        JP1とLifeKeeper for WindowsをAWS上で冗長化するための評価キットの手順書の画像

        手順書目次

        1. AWSで仮想環境作成
        2. LifeKeeper導入/設定
        3. DataKeeper導入と設定
        4. リソース作成
        5. Transit Gateway設定
        6. JP1導入と設定
        7. 動作確認

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