自動化が進む倉庫・物流業界。システム障害がもたらす業務停止をどう回避する?

    倉庫・物流業界においても人手不足は喫緊の課題であり、解消に向けて多くの企業が業務の自動化やIT活用による業務効率化に取り組んでいます。

    しかしIT活用が進むにつれて、システム障害が発生した際の影響範囲も大幅に広がる傾向にあり、運用負荷やコストを抑制しながら万一の障害発生時にも業務を停止させない仕組みの実現が求められています。

    倉庫・物流業界にとっても人手不足への対応は喫緊の課題

    内閣府が2021年7月に発表した「令和3年版 少子化社会対策白書」によれば、15歳~64歳の「生産年齢人口」は現在の約7,449万人から、2056年には5,000万人を割り、2065年には4,529万人となると予測されています(※1)。少子高齢化の進展に伴う人手不足はあらゆる業種業界の企業に大きな影響を及ぼしており、中でも倉庫・物流業界では、倉庫内作業担当者や運送担当者の人手不足が慢性化しています。この傾向は以前から課題としてあがっており、中小企業庁が2018年に行った人手不足に関する調査でも、対象となる19業種中、運輸・倉庫業は64%の企業が「人手不足」と回答するなど、全業種平均の50%を大幅に上回る結果を示しています。

    労働力が不足する一方、物流に対するニーズは拡大し続けています。昨今ではECの拡大による貨物の小口化や多頻度化などが進展、業務の増加がますます加速しています。このような背景から、倉庫・物流業界ではITを活用した倉庫作業の省人化、事務処理の効率化に取り組む事例が拡大しています。

    より高度化する倉庫・物流業界におけるIT化への取り組み

    倉庫・物流業界におけるIT化の取り組みの1つが、WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)のさらなる活用による業務の高度化です。従来のWMSは、倉庫内の荷物の在庫管理を主目的として導入されていました。しかし近年では、出荷準備やピッキング、検品・梱包といった各作業工程についてもシステム化を行うとともに、WMSと連携するようになりました。そこでは、収集・蓄積された情報を分析し活用することで、入出庫のスピードアップや人手による業務の削減など、さまざまな作業の効率化が進められています。

    もう1つ大きなIT活用の取り組みが、自動化・機械化による省人化の推進です。倉庫内における入荷から出荷までの業務について、コンピュータやロボットを導入して自動化することにより、これまで人手に頼っていた作業を削減する取り組みが行われています。

    ITを活用したこれらの業務効率化は、昨今のデジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流とも関連づけられています。DXは、荷物の入出庫や在庫管理のほか、各工程やシステムから生じるデータを収集・蓄積・活用することで、業務効率化だけでなく、ペーパーレス化、さらにはサプライチェーン全体を通じた生産性向上や、顧客である荷主の満足度向上にもつなげられるようになります。

    また、DXの推進と関連して物流・倉庫業界では、IaaSを中心としたクラウドサービスの活用も進んでいます。従来、倉庫・物流業界では、WMSをはじめとしてオンプレミスでの自社開発システムの活用を主体としてきました。しかし、要件の多様化に伴ってパッケージシステムの採用機会が増加し、さらに近年では、荷主によって異なるシステム要件に個別対応させるために、IaaSを基盤として採用したカスタマイズされたシステムの活用も拡大。迅速かつコストを抑えたシステム開発も進められています。

    IT活用の推進に伴って障害時の影響範囲も拡大

    このように倉庫・物流業界においてもITを活用した業務効率化、そしてDX化に向けた取り組みが加速しています。しかし、そうしたIT活用の拡大とともに新たな課題も浮上しています。その1つが、自動化の推進に伴うシステム障害時の影響範囲の拡大です。

    台風や水害、地震など、予期せぬ自然災害の発生による停電をはじめ、電源や空調などのハードウェア故障、オペレーションミスによるサーバーダウンなど、システム障害のリスクは枚挙に暇はありません。倉庫内における一連の作業がシステムによって自動化されるなか、こうした原因によってシステム障害が発生した場合、後工程にも多大な影響を及ぼすことになります。現場作業が完全に停止してしまう事態も生じかねません。

    また、WMSやBI、その他の関連するシステムのプラットフォームがオンプレミスやクラウドなど多岐にわたり、かつ、各システムが相互に連携している場合も、障害時の影響は多方面に及ぶことになります。著名なクラウドサービスにおいて冷却システムの故障に伴う大規模障害が発生、業務が停止してしまったという報道は記憶に新しいと思いますが、このようにオンプレミスのみならず外部のクラウドサービスの利用が拡大する中、システム障害の影響は多方面に拡大しています。加えて、さまざまなプラットフォームの利用により、障害の原因究明から復旧に至るまでの対応もさらに複雑化し、困難さを増しています。

    そして、IT担当者・運用管理者の人材不足も大きな課題です。ITの利活用が拡大する一方で、IT担当者の人材不足も浮き彫りとなり、人手による継続的な運用管理や、障害発生時の迅速な対応も難しくなりつつあります。

    障害時にも業務を止めないシステムの可用性向上がますます重要に

    これまで述べてきたように、システム停止による業務への影響範囲は拡大しており、障害時の対応範囲もオンプレミスに留まらずクラウドにまで広がっています。すなわち、障害時の対応の困難さ、担当者の負荷、そしてビジネスに対する影響は各段に大きくなっているのです。しかし、IT担当者・運用管理者の人材が不足しているなか、現在の物流・倉庫企業には運用負荷を抑制しながらも耐障害性に優れたシステムの構築が求められています

    そうした課題を解決するものが、高可用性ソリューションです。その一つである「HAクラスターソフトウェア」は、システム障害が発生した場合、本番系システムから待機系システムに自動的に切り替えを行うことでシステムのダウンタイムを短縮、ビジネス損失の最小化を可能とするものです。すなわち、いずれかのシステムが障害で停止しても、別のシステムがサービスを引き継ぐことで、業務を停止させない仕組みを実現します。

    倉庫・物流システムの新規構築やリプレースに際しては業務効率化やDXの推進に関連する機能面にのみ着目してしまいがちですが、その安定運用を維持し、止まらないビジネスを実現するためにも、改めて可用性を確保する仕組みについても考慮に入れなければなりません。自社が求めるシステムやビジネス要件に合った、最適な高可用性ソリューションを選択することで、ビジネスの事業継続性を高めていくことができます。

    【出典】※1 令和3年版 少子化社会対策白書
    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2021/r03pdfhonpen/pdf/s1-1.pdf

     

    倉庫・物流業界向け記事第二弾はこちら


     

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