皆さま、こんにちは。7月26日(金)にオンサイトでセミナーを開催しました。本セミナーではオンプレミス環境とクラウドをスムーズに統合したい企業の皆様にとって、必見のイベントとなりました。
本記事ではそのセミナーのポイントをご紹介します。
【第一部】お客様サイトでAWSが利用できる!HybridサービスAWS Outpostsの活用例と最適解のご紹介(前編)
早速、第一部はアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社、サービス&テクノロジー事業統括本部 コアサービス本部 Hybrid担当プリンシパルGTMスペシャリストの馬場様の講演です。
AWS Outpostsの日本における市場開発の責任者である馬場様からAWS Outpostsの基本的な機能について解説いただきました。AWS Outpostsは、AWSのクラウドサービスをオンプレミス環境で利用可能にするソリューションで、特にパブリッククラウドへの移行が難しいシステムをお持ちの企業にとって重要な選択肢となっています。
AWS Outpostsとは
クラウドのサービスの利用が進むにつれて、パブリッククラウドサービスに移行できないワークロードをお客様の指定するロケーションで利用可能にするというニーズに答えるためのソリューションです。
エンタープライズ企業のクラウドマイグレーションにおける課題
クラウドマイグレーションが進む中、エンタープライズ企業のクラウドマイグレーションにおける課題について紹介されました。
産業系FAシステムや金融トランザクションシステムについては「低ネットワーク遅延要件」が、金融、政府系システムにおいては「データレジデンシーの課題」があげられました。
データレジデンシーとは、企業ポリシーや法令により特定の重要データをお客様特定のロケーション内にとどめておく必要のあるシステム要件のことを表します。
また、基幹系システムなど大規模システムは全てのシステムを一気にクラウドに移行することが難しく、クラウドとオンプレミスを併用する期間が発生するけれど、「低ネットワーク遅延要件」が課題となることがあります。
AWS Outpostsの主な特長と利点
これらの課題に対してAWS Outpostsの主な特長と利点が語られました。
ハイブリッドクラウドソリューション
AWS Outpostsは、AWSクラウドのサービスをお客様のデータセンターや施設に物理的に配置し、クラウドと同様の運用体験を提供します。そうすることで、オンプレミスとクラウドのシームレスな統合が実現されます。
システム全体を同時にクラウドに持っていくことが難しい基幹系システムなど、大規模システムでもオンプレミス環境とクラウド環境を利用者はあまり意識せず利用可能になります。
カスタマイズ可能なリソース
AWS Outpostsは、EC2インスタンス、EBSボリューム、S3ストレージなどの主要AWSサービスを提供し、お客様のニーズに合わせたリソース構成が可能です。これにより、既存のITインフラとの統合や拡張がスムーズに行えます。
一貫したセキュリティと管理
AWSのセキュリティモデルをそのままオンプレミス環境に適用できるため、データ保護やコンプライアンス要件を満たすことができます。また、AWSマネジメントコンソールを使用して、クラウドとオンプレミスのリソースを一元管理できます。
使い慣れたUIで操作ができ、AWS OutpostsはAWSリージョンのリソースの一部として利用できるのは構築や運用の面でとても便利ですね。
AWS Outpostsの詳細
AWS Outpostsは物理的な機器がお客様の指定した場所に設置され、AWSの資産を企業に置く形になります、企業からするとあらゆる場所でAWSのクラウドを一元的に利用可能になります。
つまりAWSのコンソールからクラウドリージョンを利用するのと同じように利用できます。クラウドリージョンのリソースと同じようにAWS Outpostsも一つのリソースとしてコンソール上で利用することができます。
※AWS Outpostsには「Rack」と「Server」の2種類メニューが用意されています。これらの相違点については、AWS様のWebサイトをご参照願います。
本セッションでは、比較的規模の大きなシステムで使われることが想定されるAWS Outposts Rackを前提としています。
実際に設置されるAWS Outposts Rackは次のスライドのような機器です。
このラックにEC2やEBSなど普段利用しているAWSのリソースが搭載されてAWSによって設置されます。
扉は施錠されユーザ企業は機器を触ることができません。ユーザーはあくまでラックを置く場所と電源、ネットワークにつなぐためのケーブルを提供するだけで利用することができます。
クラウドリージョンで提供されるAWS CloudFormationやCloudWatchツールなどのサービスをAWS Outpostsに対して利用することができます。
AWS OutpostsではAWSリージョンのVPCはAWS Outposts上へ拡張されます。リージョン内のAZの一つのような形で利用するため、Direct Connectでオンプレミス環境に接続する場合は下りの通信コストが発生していましたが、AWS Outpostsでは料金は発生しません。
企業内のオンプレミスに残っているシステムとの通信はLAN回線での通信になるので低遅延で大容量の通信が実現できます。
まさに、産業系FAシステムや金融のリアルタイムトランザクションを処理するようなシステムにうってつけのサービスとなっています。
また、AWS Nitro Systemと呼ばれるNitro CardsやNitro Hypervisor など独自開発のハードウェアで高いセキュリティとハイパフォーマンスを実現していているとのことでした。
ユースケース
日本ではAWS Outpostsを利用されている半分が金融系の企業で、レガシーシステムのクラウド移行に活用されるケースが多いとのこと。
独立したアプリケーションはクラウドに移行しやすいものの、メインフレームなどオンプレミスに残さざるを得ないシステムを部分的にクラウドに持っていくとネットワーク遅延の問題などいろいろな課題があり部分的な移行は現実的ではなく、クラウド移行を断念されるケースがあります。
フロント系のシステムは既にAWS上で稼働している金融系企業は多く、基幹系システムはAWS Outpostsの利用を検討されるケースが多いようです。
マイグレーションのステップとしては、①既存のメインフレームがある同じLANにAWS Outpostsを設置してお客様のデータセンターにクラウドを延伸することでネットワーク遅延の課題を解消、②次のステップでメインフレームのJAVA化していくなどしてAWS Outpostsに持っていくことで最終的にはクラウドリージョンに持っていくという流れです。
次のスライドでみると、まずはリージョンに独立したシステムA、Bをクラウドに持っていきます。その次に密結合したシステムDやFをいきなりクラウドに持っていくとネットワーク遅延などの問題が発生するため、クラウドリージョンを自社のデータセンターにAWS Outpostsで延伸します。こうすることで基幹系C、EとシステムD、FはLANで通信することが可能になり、システムD、FはAWSに移行することができます。
そして基幹系システムを順次AWS Outpostsに移行します。(次のスライド参照)
最終的にはAWS Outposts上のシステムを全てクラウドリージョンに移行します。
これで企業のデータセンターはクラウドへの移行が完了します。
まずはリフト&シフトでシステムをAWSに移行し、そのあとシステムのモダナイゼーションを行いコストの見直しなども行っていくことが可能になります。
AWS Outpostsの価格
価格については、スライドの通り、コンピュートについては1年、3年、5年の定額からの選択となり、リソースは使用しなくてもAWS Outpostsを配置したら課金されます。こちらはリージョンのリソースと異なる点です。
OSやデータベースなどは利用料に応じたオンデマンド価格になります。後はサポート費用がその上にのります。
そしてスライドでは「費用なし(AWS Outpostsサービス価格に含まれる)」となっている部分ですが、こちらは「インフラ搬入、設置、導入、運用メンテナンス、廃棄費用」の部分です。本来であれば導入費用としてこういったコストが発生しますが全く必要なくなります。
AWS Outpostsを利用するまで
AWS Outpostsはオーダーから引き渡しまで約3ヶ月ほどとのことです。
移行を支援するためのプログラム
AWS様では移行を支援するための様々な無償プログラムが用意されているので是非ご利用ください。お客様の既存のシステム群をAWSに移行した際の経済効果をTCO比較として算出するクラウドエコノミクスや既存のアプリケーション群のアセスメントサービスであるApplication Portfolio Assessment (APA)などの移行をご支援する様々なサービス、プログラムが準備されています。また、AWS OutpostsにはOutposts Test Labsという無償でご利用いただくことができる検証環境も用意されています。実は弊社の検証もこのOTLを利用して実機で検証を行いました。
最後に
セミナーではさらにユーザ企業の事例をご紹介いただきました。
金融のリアルタイム処理や鉄道の運行管理システム、リアルタイム配電管理システム、スマートロジスティクスなど大規模でネットワークの低遅延などが求められるシステムがAWS Outposts上で稼働しています。
そして、これらのシステムは停止してしまうと社会的影響が大きい為、システムの障害対策や可用性についてもオンプレミスと同様にしっかり検討する必要があります。
第二部ではAWS Outpostsの高可用性の実現についてサイオステクノロジーの西下が紹介します。