Google CloudのSLAを語る~保証対象は?返金方法や申請時の注意点も紹介~

    ITサービスを利用するうえで、具体的なサービス内容がどのようになっているのか事前に確認しておきたいということはないでしょうか。
    不具合があったときの免責や違反などのルールについても、利用前に理解しておくと安心ですよね。

    利用が増えているCloudサービスの中で、Google Cloudを検討している企業は多いでしょう。
    そこで今回は、Google Cloudサービスを利用する際に押さえておきたいSLAについてわかりやすく解説していきます。

    Google Cloud SLAとは?

    Google Cloudとは、Googleのインフラを利用して稼働できるクラウドコンピューティングサービスのことをいいます。Google Cloudは、Googleが用意しているBtoB向けのサービスで、無料版と有料版の2種類があります。
    SLAは、英語のサービスレベルアグリーメント(Service Level Agreement)を略した言葉です。日本語でいえば「品質保証」や「サービスレベル合意」という意味と考えればいいでしょう。
    つまり、Google Cloud SLAとは、Google Cloudを使う際の品質を保証するものです。有料版のGoogle Cloudのサービスを受ける際は、Google CloudのSLAに同意する必要があります。なお、Google Cloud SLAは、Google Cloud公式サイトから確認できます。

    ITサービスでは、災害や故障といったアクシデントに左右されることなく稼働できることが最優先されなければなりません。停止することがあれば、その間さまざまなリスクや損害が発生することになります。可用性が重要視される業界であり、高可用性であることが必須条件といっていいでしょう。
    可用性とは、停止することなく稼働を続けられることで、一般的には稼働率として表現されています。SLAの保証対象の基準値として用いられることが多く、Google Cloud SLAでも保証の基準としてあげられているのが稼働率です。

    Google Cloudの主要サービスのSLAは?

    では、Google Cloudで提供されている主なサービスの概要を紹介していきます。なお、サービスごとのSLAは、Google Cloud公式サイトで確認することが可能です。ただし、公式サイトではSLAはほとんど英語版のままで掲載されているので、ここでは保証している稼働率を簡単に紹介します。

    BigQuery

    BigQueryは、サーバーレスのマルチクラウド エンタープライズ データウェアハウスで、データドリブンのイノベーション促進の費用効果に優れているのが特徴です。
    新規の利用者は、BigQueryで使える300ドル分の無料クレジットがもらえます。また、利用者全員を対象に「10GBのストレージ」と「最大1TBのクエリ」が無料で配布され、課金せずに使うことができます。
    なお、BigQueryのサービスレベル契約(SLA)で保証されている稼働時間は、1カ月当たり99.99%です。

    参考サイト:BigQuery Service Level Agreement (SLA)

    Compute Engine

    カスタマイズが可能で安全性が高いコンピューティングサービスです。Googleのインフラストラクチャにおいて仮想マシンを作成し、実行することができます。
    新規の利用者は、Google Cloudで使える300ドル分の無料クレジットが配布されます。その他、利用者全員が1カ月1台無料で汎用マシンを使うことが可能です。
    Compute Engineのサービスレベル契約(SLA)では、1カ月当たりの稼働率をInstances in Multiple Zonesは99.99%、A Single Instanceは99.5%、Load balancingは99.99%としています。

    参考サイト:Compute Engine Service Level Agreement (SLA)

    Cloud SQL

    デベロッパー エコシステム、構成フラグ、豊富な拡張機能コレクションを備えたフルマネージド リレーショナル データベース サービスで、MySQL、PostgreSQL、SQL Serverに向いています。
    新規利用者にはCloud SQLで使える300ドル分の無料クレジットが配布されます。 料金は、アップグレードするまで発生しません。
    なお、Cloud SQLのサービスレベル契約(SLA)に記載されている稼働率は99.95%です。

    参考サイト:Cloud SQL Service Level Agreement (SLA)

    Cloud Functions

    従量課金制Functions as a Service(FaaS)プロダクトによって、コンテナやサーバーで管理することなくクラウド上でコードの実行ができます。
    新規利用者には、Cloud Functionsで利用可能な300ドル分の無料クレジットが配布されます。また、利用者全員が200万回の呼び出しを無料で使うことができます。
    Cloud Functionsのサービスレベル契約(SLA)で保証されている稼働率は、99.95%です。

    参考サイト:Cloud Functions Service Level Agreement (SLA)

    Google Cloudの返金方法

    続いて、Google Cloudを利用するにあたってどのような内容が保証されているのか、対象のサービスや返金方法を見ていきましょう。Google公式サイトから「Google Cloud VMware Engineサービスレベル契約(2020年6月30日時点)」のケースで紹介していきます。

    Google Cloudの保証対象

    Google Cloudは、それぞれのSLAの中で返金が発生する対象サービスを明確にしています。
    「5~16ノード、FTT=2以上の単一ゾーンのクラスタ」の各月の稼働率は99.99% 以上
    「3~4ノード、FTT=1の単一ゾーンのクラスタ」の各月の稼働率は99.9% 以上
    「管理インターフェース」の各月の稼働率は99.9% 以上
    となっています。Google Cloudがこの稼働率を満たしておらず、利用者がSLAに明記されている義務を満たしているときは、Googleから返金を受けることが可能です。

    なお、FTTとは許容障害数のことで、vSAN ストレージポリシーの構成を指します。vSAN ストレージポリシーは、データ喪失前に発生を許容するノード障害数の制御を行う役割をします。
    FTT=1に設定した場合、データは最低2台のマシンにコピーされるため、1台のデータが失われることがあってももう1台で保存することが可能です。FTT=2に設定した場合は、最低でも3台のマシンにデータがコピーされ、2台のデータが失われることがあっても残り1台でデータを確保できます。

    稼働率を満たしていなかったときの返金率

    対象サービスの稼働率が保証するものを下回ったとき、実際の稼働率に応じた返金率を定めています。
    「5~16ノード、FTT=2以上の単一ゾーンのクラスタ」の稼働率が99.0%~99.99%なら10%、95.0%~99.00%なら25%、95.00%未満なら50%です。
    「3~4ノード、FTT=1の単一ゾーンのクラスタ」の場合は稼働率が99.0%~99.9%なら10%、99.0%以下は25%となっています。
    そして「管理インターフェース」は、稼働率が99.0%~99.9%なら5%、99.0%以下なら15%です。

    返金の申請方法

    先述したように、Google Cloudは提示している稼働率を下回ったときに返金が発生します。
    例えば、月額3000円支払っている場合に「5~16ノード、FTT=2以上の単一ゾーンのクラスタ」の稼働率が93%に下がっていたときは50%の1500円が返金されるという具合です。なお、実際の月額料金は見積もりが必要です。

    返金の申請は、Googleのテクニカルサポートに通知する形で行います。稼働率が達成しなかった場合、Google側がその事実を提示して返金の案内をすることはありません。対象サービスの稼働率が保証している数値を満たさなかったときは、利用者自身が返金申請を行う必要があるので注意しておきましょう。申請は、返金対象になったときから30日以内と決められている点も注意が必要です。
    なお、申請の際は、Googleに「部接続の喪失によるエラーもしくはディスクアクセスのエラー」と「それらのエラーが発生した日時を示したサーバー ログファイル」を提出します。30日経過したときや必要なデータの提出ができないときは、返金を受けることはできません。

    また、Googleから返金してもらえる最大額は、該当する月の対象サービスに対する請求額の50%より低い額となっています。Googleが提示しているSLAには、返金は「サービスの将来の利用に対して振り替えられる」形で行うとしており、適用されるのは申請から60日以内です。

    実際に稼働率を確認するには?

    稼働率とは、システムが実際に稼働している時間がどれくらいの割合になっているかを示すものです。例えば、30日間(720時間)のうち1時間停止する場合は719時間稼働していることになるため、この場合の稼働率は99.86%になります。この停止している時間をダウンタイムといいます。
    つまり、実際の稼働時間やダウンタイムをチェックすることで稼働率がどれくらいになっているか確認できるということです。

    稼働時間やダウンタイムを効率よくチェックするには、GCP(Google Cloud Platform)を監視できるサービスを利用するという方法があります。なお、Google Cloudでは稼働時間チェックのアラート作成を推奨しているので参考にするのもいいでしょう。
    アラート作成の詳しい手順については、Google Cloudの公式サイトの「稼働時間チェックのアラートを作成する」のページで確認できます。

    SLAの未適用範囲とその注意点

    保証が適用されない部分については、SLAに明記されているのが一般的となっています。Google Cloudは、免責という形で明記されています。Google CloudのSLAによれば「指定された一般提供前の機能」「関連ドキュメントで本SLAから除外された機能」「エラー」については保証は適用されません。

    なお、エラーは
    ・Google の合理的な制御が及ばない要因によって発生したエラー
    ・利用者のソフトウェアやハードウェアもしくは第三者のソフトウェアやハードウェア、またはその両方によっ発生したエラー
    ・不正行為、もしくはその他本契約に違反する行動によって発生したエラー
    ・システムによって適用された割り当て、もしくは管理コンソールに表示された割り当てによって発生したエラー
    が含まれます。

    一般提供がされる前から利用している機能やSLAに書かれていない機能については、保証の対象にならないため注意が必要です。保証対象のサービスに該当する事態が発生しても、利用しているハードウェアなどが原因になっている場合もあります。Google Cloudの返金申請は発生した時点から30日以内なので、その間に原因を確認しておくといいでしょう。

    また、Google CloudはそれぞれのサービスでSLAが用意されており、稼働率など細かい設定についてはサービスレベルごとで違います。免責にある「関連ドキュメントで本SLAから除外された機能」についても、利用を検討しているサービスのSLAで確認が必要です。

    アプリケーションの障害を回避するには?

    Google Cloudの可用性が良くても、利用する側の環境に何らかの問題があれば十分なパフォーマンスが発揮されないこともあります。アプリケーションで起こりがちな主なトラブルといえば「フリーズや一時停止」「再起動や電源が落ちる」「速度処理が遅くなる」「エラーによる強制終了」などです。そして、こうした障害が発生しやすい要因として一般的には次のようなことがあげられます。

    CPUの性能

    PCのCPUの情報処理能力が低いと、アプリケーションをスムーズに使えないことがあります。特に複雑なアプリケーションを稼働させるときは、CPUの処理能力が十分かどうか確認しておくといいでしょう。

    メモリやストレージの容量

    メモリの容量がどれくらいあるかは、アプリケーションをスムーズに進めるうえで重要です。ストレージの容量が少ない場合も、アプリケーションが不安定になることもあります。複雑な作業を行うアプリケーションを使うときは、相応のメモリが必要になります。また、常に不要なデータを削除するなどし、ストレージの空き容量に余裕を持たせることです。

    OSとの相性

    アプリケーションのバージョンによっては、OSとの相性が悪くなることもあります。アプリケーションをバージョンアップしてみて不具合が起こりやすくなったときは、OSとの相性を考えたほうがいいかもしれません。アプリケーションの推奨環境を確認し、必要に応じてOSもアップデートしておくとトラブルを回避しやすくなります。

    Google Cloudを活用してみよう

    SLAとは、サービスレベルアグリーメントの略で、簡単にいえば品質保証のことです。
    Google Cloudは、サービスごとのSLAで品質を保証する対象サービスと返金の基準や返金方法について明確に公開しています。SLAを見てもわかるようにGoogle Cloudは可用性の高いサービスですが、事前に構成などきちんと確認しないと損をしてしまうかもしれません。可能な対策を十分とったうえでGoogle Cloudを活用しましょう。

    もし、GoogleCloudでのシステム構築を検討しており、SLAに不安がある場合は弊社にお問い合わせください。
    クラウドサービスだけでは補えない可用性についてソリューションを提供いたします。