HAシステム(4) – 仮想化環境における高可用性システム

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     ハードウェアとソフトウェアを論理的に切り離したサーバー仮想化環境では、高可用性システムは不要なのでしょうか。サーバー仮想化のリスクとともに、ハイアベイラビリティ(HA)クラスターによって、さらに可用性を高める必要性について考察します。また、物理ノードのスタンバイとして、サーバー仮想化環境を利用する方法についても紹介します。

    >>仮想環境(VMware)上でミッションクリティカルなIT基盤を構築するには?

    サーバー仮想化のメリットとデメリット

     サーバー仮想化により、複数の物理サーバーを集約することで、物理サーバーの数を減らすことができます。例えば、古いサーバー3台を新しいサーバー1台に統合することで、新しいサーバーのCPUやメモリなどのリソースを共有することが可能となり、3台の仮想サーバーで有効に活用するなど、さまざまなメリットが期待できます。

     サーバーの数を減らすことができるので、サーバーの設置面積や電力消費量を大きく削減することができるほか、運用管理も効率化できるので、運用管理コストを低減できます。また、古いOSやアプリケーションを、そのまま新しいサーバー上で運用できるので、既存のソフトウェア資産を有効に活用できます。

     さらに、ライブマイグレーション機能を利用することで、サービスを停止することなく仮想サーバーを別の物理サーバーに移動できるので、メンテナンス性を高めたり、可用性を向上させたりすることもできます。それでは、サーバー仮想化環境では、高可用性システムは不要なのでしょうか。

    仮想化のリスクと可用性を高める必要性

     複数の物理サーバーをサーバー仮想化により、限られた台数の物理サーバーに集約することで、サーバーの運用管理を効率化できるほか、作業負荷を軽減することができます。しかし、集約した物理サーバーに障害が発生した場合、状況は一変します。物理サーバー上で、ミドルウェアやアプリケーションを稼働している場合、集約前の物理サーバーに障害が発生しても、影響範囲は障害が発生した物理サーバー上のミドルウェアやアプリケーションに限られます。

     サーバー仮想化により、1台の物理サーバーの上で複数の仮想サーバーが稼働している場合、この集約した物理サーバーにおける障害は、この物理サーバー上で稼働しているすべての仮想サーバーに及びます。そこで有効になるのが、ライブマイグレーション機能です。ライブマイグレーション機能により、障害が発生した物理サーバー上の仮想サーバーのサービスを停止することなく、正常稼働している物理サーバーに引き継ぐことができます。

     これにより、物理サーバーに障害が発生した場合でも、システム全体として処理を継続することが可能になります。ただし、ライブマイグレーション機能が対応できるのは、物理サーバーとハイパーバイザー、そしてゲストOSまでです。そのため、ゲストOSの上で稼働するミドルウェアやアプリケーションに障害が発生した場合、ライブマイグレーション機能で復旧することはできません。

     そこで、独自にHAクラスターソフトウェア製品を導入することで高可用性システムを構築し、可用性を高めることが必要になります。サーバー仮想化環境で高可用性システムを実現することで、仮想環境内における仮想サーバーの高可用性はもちろん、物理サーバーをベースとしたHAクラスターシステムの構築や、段階的な仮想環境への移行も可能になります。

    仮想環境で高可用性システムを実現するには

     システム障害は、ハードウェアや基本ソフトが原因となることよりも、その上で稼働するミドルウェアやアプリケーションの障害に起因するものの割合が増えてきています。そこで、システム障害による業務への影響を最小限にするためには、ミドルウェアやアプリケーションの可用性を向上させ、アプリケーションを含めた監視と回復措置を備えることが重要となります。

     HAクラスターソフトウェア製品を使用することで、ミドルウェアやアプリケーションが原因となる障害を検知し、自動的にリカバリーを実現できます。物理サーバーに障害が発生した場合、ライブマイグレーション機能を利用することもできますが、HAクラスターソフトウェア製品を利用して、障害が発生した物理サーバーを、ほかの物理サーバーにフェールオーバーすることで、より短時間で機能を回復することが可能となります。

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     HAクラスターソフトウェア製品を利用した場合、ゲストOSの障害復旧の時間をライブマイグレーション機能と比較し、さらに短縮することができます。また、ハイパーバイザーの障害復旧の場合には、物理サーバーのフェールオーバーが必要ですが、HAクラスターソフトウェア製品を利用することで、ライブマイグレーション機能よりもフェールオーバーの時間をより短縮することができます。

     また、HAクラスターソフトウェア製品を利用することで、より幅広い分野の可用性を向上できます。例えば、ロードバランサーで管理されている複数のサーバーでアプリケーションを並列方向に多数稼動させている場合、一部のアプリケーションに障害が発生しても、自動的に回復することができます。また、計画停止やハードウェアのメンテナンス時の安全性まで考慮して、安心して運用できる万全な環境を実現できます。

     いずれの仕組みにおいても、HAクラスターソフトウェアを利用することで、アプリケーションの高可用性からHAクラスターまで、幅広いサーバー仮想化環境に対応した高可用性システムを実現できます。

     今回は、仮想化環境における高可用性システムについて紹介しました。次回は、「クラウド時代の高可用性システム」について紹介します。

    >第5回 クラウド時代の高可用性システムを読む

    「仮想環境(VMware)における高可用性実現のポイント」をわかりやすくまとめた資料をご用意。アプリケーションの特性や運用要件に応じて、7つの構成パターンとそれぞれの障害時の自動復旧動作を紹介しています。