【DRBD事例】OSSを使って1億円のコストを削減!止まらないシステムで業務改善

    こんにちは、マーケティングの井上です。
    今回は、DRBDを使って印刷業務を支えるシステムを冗長化した事例をご紹介いたします。

     

    婚礼の招待状や年賀状の印刷などのB2B向けサービスを手掛けるマイプリント。結婚式場に依頼した印刷物や、店舗に依頼した年賀状を実際に印刷して納品するため、消費者はマイプリントの仕事を直接意識することはあまりないが、縁の下の力持ちとして婚礼や新年の喜びを支えている。 

     マイプリントでは、アナログな手法で行っていた印刷物の校正作業をデジタル化して、業務の効率化を図った。その際に、止めてはならないシステムを冗長化するため、オープンソースソフトウエア(OSS)のレプリケーションソフト「DRBD(Distributed Replicated Block Device)」を導入し、安定した稼働を実現している。 

    大量なFAX機器の更改がシステム化のきっかけに 

    マイプリントの業務の中核である婚礼向けの印刷事業では、招待状、席次表、席札、メニューが主要な印刷物となる。これらの原稿を受け取り、校正して最終的な印刷工程に回すまでの作業が、実にアナログ的な業務だった。ウェディングプランナーとのやり取りは「紙」の情報をFAXでやり取りする方法が今でも一般的だからだ。FAXで受信した用紙を机に並べ、初校、再校を振り分け、文字などのチェックをした上で、生産工程にFAXで送って原稿を作成、修正する。印刷前の「プリプレス」と呼ぶこれらの工程が、FAXを軸とした人海戦術で行われていた。 

     マイプリント 社長室  Webビジネス事業部 Project Leader  Executive Advisorを務める古川博教氏は、「FAX機器が古くなったから変えたいという要望が出てきました。FAXは全国の拠点を合計すると100台以上に上ります。FAXサーバーも複数台あり、これらを更新するとなると数千万円といった規模のコストがかかります。これからコストをかけてFAXを更改するのか?という疑問が、プリプレス工程のシステム化のきっかけでした」と語る。 


    システム化を牽引したマイプリント 社長室 兼 Webビジネス事業部 Project Leader 兼 Executive Advisor 古川博教氏

    データを分析すると、婚礼向けの市場が縮小し、婚礼者が直接Webで印刷を申し込む市場に需要がシフトしていることがわかった。マイプリントでもWebで直接受け付ける「ウエディングパートナーシステム」のビジネスを展開しているが、落ち込みを支えるほど大きな規模にはなっていない。そのため婚礼向けの印刷にかかる業務を効率化することで、コストを抑えることが急務になっていた。 

    プリプレスの中でも、結婚式場とFAXで原稿をやり取りしてチェックする「インフォメーション」と呼ぶ部門と、インフォメーションからFAXで受け取った原稿に印刷で必要な情報を付加する「入稿」と呼ぶ部門で、FAXのやり取りが集中していた。 

    「結婚式場は大小合わせて5000会場ほどあり、そのうち2500会場が常時稼働しています。2500会場のほぼすべてと取引があるため、インフォメーションでは一か所で500枚のFAXを受けて、振り分けてチェックし、入稿部隊にFAXで送信していました。出来上がった原稿は逆の流れで式場にFAXEメールで送信します。インフォメーション部門の業務の多くがFAXの用紙を振り分けたり、送信するためのFAX機器との間を動き回ったりすることに割かれていました」(古川氏) 

    一方で、顧客である結婚式場に対して「FAXをやめてくれ」とは言えない。FAXで受信した情報を紙に出力せずにハンドリングして、振り分け、チェックをした後に印刷工程にわたすシステムを構築すれば、業務は効率化できる。売上は簡単には上げられなくても、コスト削減は内部の問題やれば成果がでると確信していました。長いスパンでみると、今やらなければならないと判断し、社長直下の社長室のプロジェクトとして短期間で成果を出すプロジェクトを稼働させました」(古川氏)。待ったなしのプロジェクトだったのだ。 

    原稿をパソコンに表示するシステムを構築し3割以上の効率化 

    婚礼のプリプレスで導入したのは、FAXで受信した原稿をパソコン上でハンドリングして、印刷工程に回せるようにするシステム。米Twilioラウドコミュニケーションプラットフォームサービス「Twilio」で受信FAXを電子化し、オープンストリームのビジネスUI実行ツールBiz/Browser」でパソコン画面に原稿を表示させる仕組みを採用した。FAXを受信した「紙」で振り分けて、チェックして、送信するといった業務を、すべてシステム上に移行したのだ。 

    システムは1弾の開発にかかり、4カ月ほどで導入にこぎつけた。「同時に、業務の見直しも行いました。インフォメーション部門のチェック作業と入稿部門のチェック作業は、重複している部分があったので、インフォメーションが入稿に必要な情報を迷わず付加できるようにシステム側でサポートすることで、作業を一元化しました」(古川氏)。1つのインフォメーションで約500枚のFAXを振り分ける作業が、画面上でスムーズにできるかを心配していたというが、実際には2人の作業で済むようになった。第2弾で他の拠点への展開も進めた。 

    紙の作業からデータによる作業に変わり、プリプレスの生産性は格段に向上した。紙をハンドリングしてチェックやFAXの再送信をしていた作業が、パソコンの画面のデータの取り扱いだけで済むようになり、社内を移動する時間は大幅削減。インフォメーションと入稿の業務を整理したこともあり、業務の効率化は目に見えて成果が上がった。 

    「これまでは自然減した人員を拠点ごとに補充していましたが、システム化で業務が効率化できたため補充せずに済むようになりました。これだけでも15%ほど生産性が上がりました。さらに、FAX機器や出力する用紙のコストも合わせると、1億円のコスト削減が実現できました。これならば、システム投資コストは1年でペイできてしまいます」と古川氏。インフォメーションのコストは年間約3億円だったため、3割以上のコスト削減効果が得られた。 

    システム化したからこそ止まらないシステムが必要 

    プリプレスの業務をシステム化するに当たって、最優先の事項があった。それが冗長化だ。「招待状は、大安吉日などを選んで投函することが多く、納期にずれが生じると次の大安吉日まで発送が遅れてしまいます。システムが止まって納品できないという事態は避けなければなりません」(古川氏)。これまでも生産工程はシステム化されていたが冗長化までは行っておらず、止まったときは現場が頑張って吸収するような状態だった。しかし、働き方改革の影響などもあり、システムが止まったから深夜まで働けというような吸収の仕方はない。「冗長化は最優先の課題でした」(古川氏)。 

    一方で、コストバランスも重要だった。サーバーはLinuxを選択、その上で冗長化ソフトウエアを探したところ、LINBIT社が開発したオープンソースソフトウエアのレプリケーションソフト「DRBDに目をつけた。そこで、当時DRBDのサポートサービスである「LINBITクラスタスタックサポート」を提供していたサードウェア(現サイオステクノロジー)に相談したところ、快く応じてくれた。ライセンス費用を払う商用ソフトウェアではなく、LINBITクラスタスタックサポート」がサブスクリプション型での提供であったことも、スモールスタートで実績をあげてから拡大するという、プロジェクトの主旨にも合致した。 

    婚礼のプリプレスのシステムは、NECIaaS(インフラアズアサービス)で実現することになった。マイプリントの情報システム部にはLinuxを扱える担当者はいない。そこで、再びサードウェアに相談したところ、OSSに強い販売構築パートナーがいるということ、コストは若干高かったが総合的な運用サポートが充実していたデージーネットにDRBDを用いたHAクラスタの構築および運用サービスを依頼した。「今回の冗長化では、コストがある程度かかっても最終的に人件費が削減できればいいと考えてましたそのためIaaSの利用と冗長化したシステム構成に対して、サポートが充実しているベンダーに頼みたかったというのが第一でした」(古川氏)


    サイオステクノロジーとデージーネットの協力により「止まらないシステム」が順調に稼働している

    冗長化したシステムは2社の協力のもと、安定して稼働できている。古川氏は、「当初は、アプリのミスや実装のミスでシステムが止まることがありました。しかし、ほとんど瞬時に切り替わっているので、スタンバイで稼働していることに気づかないほどです。問題があっても、システムとして止まることはなく、狙い通りの成果が得られています」と評価する。

    婚礼のプリプレスのシステムの成功は、マイプリントのシステム全体の更改にも影響を与えた。婚礼のプリプレスに続いて、婚礼や年賀の出荷のシステムも、IaaSDRBDによる冗長化の構成に切り替えたのだ。年賀状の注文と出荷が集中する2019年の年末でも、DRBDで冗長化したシステムはダウンすることがなかった。「今後、社内で新しく作るシステムは、すべてこの構成にしようと考えています」と古川氏。信頼性の高いシステム基盤を手に入れたことは、既存事業のコスト削減だけでなく、Webからの婚礼印刷を本格化させる新規ビジネスの立ち上げなどにも向けて、マイプリントの飛躍の大きな土台になっているようだ。 

     

    最後に

    OSSの「DRBD」を使用した、スモールスタートの成功事例をご紹介いたしました。
    コストメリットの大きいOSSですが、トラブル時などのサポートがないため、止められないシステムでの利用に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。サイオステクノロジーでは、「Pacemaker」「Corosync」「DRBD」のソースコードレベルでの日本語サポートや、ホットフィックスの提供など、お客様の要件に応じた、安心かつ充実のサポ―トプランをご用意しております。OSSで止まらないシステム構築をお考えの方は、「LINBITクラスタスタックサポート」のご利用をご検討ください。

    「LINBITクラスタスタックサポート」についてはこちら
    そもそもDRBDとは何か?を学べる動画も公開しています。是非ご活用ください!