どこでもアプリとデータを活用できる「Nutanix Cloud Platform」、業務を支える高可用性の選択肢

    クラウド環境の多様化が進む中、企業は「止まらないインフラ」をどう実現するかという課題に直面しています。今回は、Nutanix Cloud Platformの最新動向やVMware移行の実態、そしてLifeKeeperとの連携による可用性向上について、ニュータニックス・ジャパンのシニア・プロダクトマーケティング・マネージャー 三好哲生氏に直接お話を伺いました。
    インフラとアプリを守る「二重の安心」がどのように成り立つのか、そのポイントを分かりやすく紹介します。

    「どこでもクラウド」を実現するソフトウエア群を提供

    アプリとデータをあらゆる場所で活用できる統合プラットフォームを提供する――。シリコンバレーのサンノゼに本拠地を置くNutanix(ニュータニックス)は、アプリケーションの実行とデータを管理する統合プラットフォームをソフトウエアで提供する。創業は2009年、日本法人のニュータニックス・ジャパンは2012年と早期に設立された。これまでにグローバルで7000人規模の企業へと成長している。

    ニュータニックス・ジャパン マーケティング本部 シニア・プロダクトマーケティング・マネージャーの三好哲生氏は、「Nutanixを古くからご存知の方にはデータセンター向けのアプライアンス製品のベンダーというイメージが強いかもしれませんが、創業当初からソフトウエアカンパニーを標榜しています。クラウドソフトウエアの開発、提供、付帯サービスの販売が事業の中核を占めています」と企業の成り立ちを語る。

    Nutanixが提供する「Nutanix Cloud Platform」は、どこででもアプリを動かし、データを管理できる単一の統合プラットフォームとして提供する。データセンターに導入すると、オンプレミス上でクラウドのような利用環境を整えられる。パブリッククラウド上に実装すれば、Nutanixソフトウェアの機能をそのままクラウド上で利用できるNutanix Cloudとして動作する。工場や店舗、支店などのエッジ環境に導入するケースもある。さらに、仮想マシン(VM)を動かすコンピューティング基盤、ストレージサービス、データベースサービスなどをソフトウエアで提供し、さまざまな場所で稼働しているNutanixのクラウドを一元管理できることが大きな売りになる。

     

    ニュータニックス・ジャパン マーケティング本部
    シニア・プロダクトマーケティング・マネージャー 三好哲生氏

    もう1つの売りが「シンプル」であること。「お家芸として『1−クリック』を掲げています。通常ならば複雑な操作が必要なケースでも、Nutanixソフトウェアならば高度な操作はバックグラウンドで動きユーザーは1−クリックするだけで完結する操作性を提供しています」(三好氏)。Nutanix Cloud Platformがクラウド全体を再現するソフトウエアとして構築されているので、必要な機能やソフトの追加も容易だ。インフラの運用をユーザーに意識させないシンプルさが、思想として実装されている。

    VDIから始まりエンタープライズへ広がる

    クラウド基盤として提供されているNutanixソフトウェアは、幅広い用途に対応する。特定の業種や業態、規模などに縛られずに利用が広がっている。そうした中で、「キラーユースケースは時代ごとに異なっていました」と三好氏は説明する。Nutanixが日本に上陸した初期からしばらくは、VDI(仮想デスクトップ)である。自治体や金融機関などがNutanixプラットフォーム上にVDI環境を構築するケースが相次いだ。

    その後は、エンタープライズ全般に利用シーンが広がった。多数のデータベースを抱えて、データベースサーバーの管理が複雑化してしまった企業がNutanix上にまとめて集約し、シンプルに運用する例が増えている。また、社内のファイルサーバーをオンプレミスに残したまま、クラウドのストレージサービスのようにスケールアウトさせたいというニーズにも応えてきた。

    大企業だけがユーザーではない。「規模の小さな組織で情報システム担当者が1人だったり、総務部がIT部門を兼務したりするようなケースでも、Nutanixソフトウェアの1−クリックに代表されるシンプルな操作性が業務を支えています。3ノード程度の小規模クラスターならば人手をかけずに運用が可能で、1ノードで障害が起きても残りの2ノードで業務を継続できます。障害対応をすぐに行えないような小規模な環境でも、安心して利用できるのです」(三好氏)。

    こうした「小さく始めて大きく伸ばせる」特性は、クラウド時代ならではの利点だ。NutanixプラットフォームをAWS上に環境を構築し、バックアップ専用のクラウド環境として利用することもできる。オンプレミスのクラスターのスナップショットを一定時間ごとにAmazon S3などのオブジェクトストレージへ送っておけば、いざというときにクラウド側のNutanix環境でサービスをすばやく復旧できる。システムの完全な二重化が難しい中堅・中小企業や地方拠点にとって、現実的なディザスタリカバリ(DR)の選択肢になっている。

    最新の導入事例としては、東芝が新規採用を決定したケースが挙げられる。また、最近では東急不動産ホールディングスの導入事例もある。クラウドファーストを掲げてきた東急不動産ホールディングスは、従来VMware Cloud on AWS(VMC)で運用していた基盤をクラウド上のNutanixソフトウェア(Nutanix Cloud Clusters – NC2)に載せ替える形で移行した。約270台のVMを2カ月程度で移行し、ダウンタイムを最小化しながら運用コストの削減にも成功している。

    さらに、「富士通では約2000台のVMから成るVMwareベースのサービス基盤をNutanixソフトウェアに移行し、約3000社の顧客へ提供しているサービス全体の運用コストを9割削減できました」(三好氏)という。ハードウエアやソフトウエアの費用だけでなく、運用にかかる人件費を含めたトータルコストを大きく圧縮できた点は、多くの企業にとって参考になるだろう。

    迅速なNutanixへの移行で時間とコストを削減

    Nutanixが着目される理由の1つに、VMwareの動向がある。長年、企業ITの標準的な仮想化基盤として利用されてきたVMwareだが、Broadcomによる買収をきっかけに、将来のライセンス体系やロードマップに不安を抱いた企業が代替基盤を真剣に検討し始めた。三好氏は、「VMwareとNutanixは、これまでの競合として切磋琢磨してきました。ここにきてNutanixが磨いてきた技術が評価され、VMwareからの移行先として期待されるようになったと考えています」と状況を見る。

    それでは、VMware環境からNutanix環境への移行は簡単にできるのだろうか。三好氏は、「技術的には仮想マシンを移動させるだけなら、移行ツールのNutanix Moveを使うことで再起動1回分ほどのダウンタイムで実現できます。しかし、実際には多くのVMware環境上のシステムがビジネスと密接に結びついているので、単純に明日からNutanix環境に移行しましょうとは言えません」と説明する。ビジネスへの影響を最小化しながら、タイミングを見計らって順次移行するといったスケジューリングが重要になるとの見方だ。

    オンプレミス・クラウドを問わず、Nutanix Cloud Platformへの移行は、Nutanix Move を使うことで迅速かつコスト効率よく実行できる。「償却期間の長いデータセンターを使い続けるのではなく、迅速にサブスクリプションのクラウドを利用するといった選択ができます」(三好氏)。

    さらに、パブリッククラウド上に「Nutanix Cloud Clusters(NC2)」を構築し、そこを移行先にするパターンもある。NC2はオンプレミスとパブリッククラウドの両方にデプロイが可能で、これを使えば既存データセンターからクラウドへの移行時間を最大60%短縮し、移行に伴うコストを最大50%削減できるという。「VMwareからAWS EC2のようなパブリッククラウドのネイティブサービスに移行した際にサービスレベルが落ちてしまうようなケースでも、Nutanixソフトウェアなら同様のサービスレベルを担保できます」(三好氏)。

    周辺機器との接続性も高まっている。「DELL EMCやPure Storageなどの外部ストレージへの接続が可能になりました。これにより外部の接続を変えずにNutanixソフトウェアのシンプルな操作性を享受できる構成が組めます」と三好氏。既存設備を生かしながら、仮想化・運用基盤だけを先にNutanix環境へ移行するといった段階的アプローチも取りやすくなっている。

    インフラとアプリの「二重の安心」をLifeKeeperと実現

    このようにNutanixは企業や組織のさまざまなシステムのインフラとして運用されており、仮にNutanixソフトウェアで構築したシステムが止まると、ビジネスに大きな影響が出る。ミッションクリティカルなシステムでは、可用性の担保が不可欠になる。もちろんNutanixソフトウェアは、インフラレイヤーで可用性を確保する機能を備える。クラスターを構成するノードの1台が停止しても、自動的にリビルドされてクラスター全体としてデータを失わないように設計されている。アプリケーションが一時的に止まったとしても、再起動すれば直前までのデータを使って業務を再開できる。

    とはいえ、インフラレイヤーだけでは解決しきれない部分がある。OSやアプリケーションの再起動を行なって復旧を運用ポリシーに従って、行なった場合、復旧までにはかなりの時間がかかる。OSやアプリケーションの再起動には、どうしても数十秒から数分の時間がかかる。金融機関の決済システムやカード会社・保険会社の基幹業務など、「その間もサービスを止めたくない」システムでは、アプリケーションレイヤーでの高可用性対策が欠かせない。

    三好氏はアプリレイヤーでの可用性を担保するソフトとしてLifeKeeperに信頼を置いている

    ここで登場するのがサイオステクノロジーの高可用性ソフト「LifeKeeper」だ。Nutanixは、サイオステクノロジーのLifeKeeperやデータレプリケーションソフト「DataKeeper」などを検証済みソリューションとして認定。両者の製品が連携して可用性を確保することが可能になった。

    三好氏は、「Nutanixソフトウェアではデータのロスがない部分を確保し、アプリケーションの復旧はLifeKeeperで担保します。我々インフラレイヤーから見えていないアプリケーションの世界の可用性がサイオスの技術で保証され、安心感をより高めることができます」と説明する。

    すでにLifeKeeperを導入済みの組織にとっても、このソリューションの連携は大きなメリットがある。LifeKeeperを活用したミッションクリティカルなアプリケーションの設計を変えずに、基盤だけをNutanixソフトウェアへ移行できるためだ。オンプレミスでもクラウド上でも従来通りのLifeKeeper構成を維持したまま、インフラを最新のクラウドプラットフォームへ載せ替えられる。移行時のダウンタイムを最小化し、移行後も同じ可用性レベルを担保することが求められるプロジェクトにとって、これは非常に重要な条件になる。

    Nutanixのインフラは今後に向けて、コンテナ化したアプリケーションを自動的に運用管理するKubernetes環境も視野に入れている。コンテナとKubernetesが普及すれば、「アプリケーションもデータもロストしない世界に近づきます。しかし、現実にはすべてのアプリケーションを一気にKubernetesへ書き換えることは難しく、仮想マシンを前提とした既存システムを守りながら段階的にクラウド化していく手段としてNutanixソフトウェアが価値を発揮します」(三好氏)。そうした状況だからこそ、可用性を担保するLifeKeeperとの連携の意味も高まるのだ。