高可用性システムを構築する場合には、どのようなストレージが最適で、どのようなストレージ構成にすべきなのでしょうか。ストレージの冗長化だけでなく、最新のSDS(Software Defined Storage)など、ストレージ仮想化技術の話題も含めて高可用性を実現するストレージ技術を紹介します。
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高可用性システムに共有ストレージは必要か
一般的なHAクラスタリングシステムでは、稼働系ノード、待機系ノードに分割して、サーバーやアプリケーションを二重化し、相互に監視する仕組みになっています。これにより、稼働系ノードに障害が発生した場合、迅速に待機系ノードに処理を引き継ぐことで、システム全体としての稼働率を向上することができます。このとき、外部ストレージとして、共有ストレージ構成が多く採用されていました。
これまでは、共有ストレージとして、SAN(ストレージエリアネットワーク)が広く利用されてきました。しかし、共有ストレージをSANで構成する場合、高価なハードウェアを導入する必要があり、ランニングコストが高額になる傾向がありました。また、運用においても専門知識が求められるため、導入には高いハードルがありました。
また、外部ストレージの物理的な制約条件により、アプリケーション性能を最大限に活用することができない場合があります。さらに、計画メンテナンスが必要なため、サービスレベルにも制約が発生します。そのほか共有ストレージは、クラウド上では利用できないため、クラウド環境の持つ柔軟性や災害対策の利便性を生かすことができませんでした。
それでは、HAクラスターを構築するときに、高価な共有ストレージは本当に必要なのでしょうか。共有ストレージを使用せず、稼働系ノード、待機系ノードのローカルストレージ同士でのデータレプリケーション構成を取り入れることで、これまでの共有ストレージの課題を解決し、自社のニーズに最適なHAクラスタリングシステムを構築することが可能になります。
どのようなストレージ構成にすべきか
従来のHAクラスタリングシステムでは、SANをベースとした共有ストレージの利用が前提となっており、コストや構成、管理などの制約が大きな課題でした。また、仮想化環境やクラウド環境など共有ストレージを構成できないケースがあることや、共有ストレージが単一障害点(SPOF)となる可能性があること、そのほか、共有ストレージの構築・運用に専門知識を持ったエンジニアが必要なことも課題になっていました。
こうした課題を解決できるのが、HAクラスタリングソフトウェア製品に搭載されている「データレプリケーション」機能です。データレプリケーション機能を利用することで、Windows環境、Linux環境に関わらず、比較的安価なサーバーのローカルストレージを利用して、柔軟に高可用性システムや災害復旧システムを実現できます。
これにより、データセンター内や複数の地理的エリア、クラウドのアベイラビリティゾーン間をまたいでHAクラスタリングを実現できます。また、ブロックレベル・レプリケーション(同期または非同期)により、すべてのノードのストレージ間において、データが同期されます。さらに、シングルサイト、マルチサイト、クラウド、混在環境など、幅広い分野を柔軟に保護することが可能となります。フェイルオーバー時には、待機系ノードから、即座に最新データにアクセスもできます。
データレプリケーション機能を利用するメリットは、高価なSAN環境を導入することなく、物理環境はもちろん、仮想環境、クラウド環境のいずれの組み合せにおいても、アプリケーションおよびデータの保護を実現できることです。また、業界標準ハードウェアとソフトウェアを、稼働系ノードと待機系ノードに使用できるので、ベンダーロックインからも解放されます。
さらに、サーバーのローカルストレージにSSDストレージなどを使用することで、より高速なアプリケーションの応答時間、高可用性、および災害復旧環境を柔軟に実現できます。SANでは実現が難しかった、地理的に離れた複数の場所でのデータ複製も容易です。これにより、サイト全体、ローカル、およびリージョン単位で災害保護機能を実現することができます。
これらのいずれの仕組みにおいても、HAクラスタリングソフトウェアを利用することで、幅広い環境に対応した高可用性システムを実現できます。
ストレージ仮想化技術
最後に、最新のストレージ技術である「SDS(Software-Defined Storage)」について紹介します。SDSは、一般的な汎用サーバーとストレージソフトウェアを利用することで、これまでの専用ストレージと同じストレージ環境を実現する新しい技術です。汎用サーバーを利用することで、システムの使用するデータ量、必要な処理能力に応じて、サーバーの台数を調整し、容量の拡張や縮小、パフォーマンスの向上などに柔軟に対応することができます。
仮想化技術を採用していることから、物理環境はもちろん、仮想環境やクラウド環境においても信頼性が高く効率的なデータ保護と可用性を提供することができます。SDSをベースとした仮想アプライアンスは、バックアップ/リストアの最適化、サービス稼働時間の最大化、遠隔地レプリケーションや災害復旧機能による可用性の向上などの分野での利用が期待されています。
今回は、高可用性システムに最適なストレージについて紹介しました。次回は、「仮想化環境における高可用性システム」について紹介します。