世界の経営者が考えるビジネスリスク・トップ10

    Allianz Global Corporate & Specialty, Risk Barometer 2016
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     企業が長年にわたって存続していくことが難しい時代になっています。企業の存続を脅かす原因はさまざまですが、世界の企業のトップはどのようなものを脅威と捉えているのでしょうか。今回はドイツの保険会社であるAllianz社が毎年公開している調査「Risk Barometer」をもとに、その調査結果について、カウントダウンしながら考察していきたいと思います。

     

     

     

     同社は毎年この調査を行っており、グローバル全体の結果のほか、地域別や産業別のビジネスリスクトップ10を公開しています。

    10位から6位のビジネスリスク

    10位:窃盗、詐欺、汚職
     窃盗や詐欺、汚職といった犯罪は、企業規模や業種にかかわらず存在するリスクです。しかも、外部だけでなく内部に犯罪者が潜んでいるケースもあり、人間の心理に基づくものなので、対策が困難といえます。前年の調査でも10位ですが、その割合は前年の9%から2016年は11%に増加しています。

    9位:政治的リスク(戦争やテロなど)
     日本でこれらのことが起きる可能性はまだまだ低いですが、海外にも拠点や視点を持つ企業の場合は考慮する必要があります。また、大きな取引先が海外にある場合も同様ですし、日本政府の発言などが間接的に影響を及ぼす可能性もあります。なお、順位、割合ともに前年調査と同様です。

    8位:火災・爆発事故
     企業の建物や施設が直接被害を受けるという点では、重大な脅威といえます。特に爆発の場合は事業の停止を引き起こし、多くの関連企業が深刻な事態に陥ります。たとえば2015年8月に発生した中国の港湾都市での爆発事故は、流通にも大きな影響を及ぼしました。その影響もあり、前年は27%で3位でしたが、今回は16%で8位となっています。

    7位:評価やブランド価値の失墜
     これは、何らかの原因が別にあり、しかも直接的な原因と間接的な原因が考えられるリスクです。直接的な原因には、企業で不祥事が発生してしまった場合などがあり、間接的な原因には風評被害も考えられます。いずれにしても、失墜したブランド価値を取り戻すことは大変です。ランクでは、前回の6位(16%)から7位(18%)に後退しています。

    6位:マクロ経済動向(緊縮財政プログラム、商品価格上昇、膨張/収縮)
     マクロ経済動向は、国や業界、市場での大きな動きの影響です。企業の拡大が国の政策によって阻害されたり、海外での原料の高騰などで商品の価格を上げざるを得ない場合などが考えられます。今回、初めてのランクインとなりました。

     

    5位から1位のビジネスリスク

    5位:法律や規制の変更(経済制裁、保護主義)
     日本では、いわゆるマイナンバー法の施行や改正個人情報保護法など、法律への対応のために企業の負担が増すこともあります。また、業界ごとのガイドラインも刷新されており、中小企業では対応のために本来の業務が停滞してしまう可能性もあり、無視できないリスクとなります。前回の4位から、ひとつ後退しました。

    4位:自然災害(台風、津波、地震など)
     最近では、数年と置かずに大きな自然災害が発生しています。ゲリラ雷雨による交通手段の断裂や停電などは業務に直接、影響を与えます。また、熊本地震は記憶に新しいところですが、しばらく地震が起きていなかった地域で大地震が発生しています。ランクは前回の2位(30%)から4位へ下がっています。

    3位:サイバーインシデント(サイバー犯罪、情報漏えい、システム障害)
     サイバー犯罪は日々進化しており、現在ではサイバー犯罪者優位と言われるほどになっています。標的型攻撃は数年にわたり企業に潜んで情報を盗みますし、システムダウンを狙うDDoS攻撃もひんぱんに起きています。企業トップの認知も進み、前年の5位(17%)から3位に上がりました。

    2位:市場動向(ボラティリティ、競争の激化、市場の停滞)
     前回は圏外だった市場動向が、今回いきなり2位となっています。ボラティリティとは価格変動のことで、企業の利益と直結します。また、クラウドソーシングなどにより新規参入企業が増加して価格破壊を引き起こし、これまで無関係だった業界が競合に変わったりしています。これまで安泰だったからといって、今後も安泰とは限らない時代なのです。

    1位:事業中断(サプライチェーンやディストリビューション含む)
     1位は前回と同様に「事業中断」となりました。事業が止まるということは、企業がなにひとつ生み出せない状況に陥ることです。特に日本では、サプライチェーンやディストリビューションとの関わりが深いため、これらの事業中断が大きな影響を受けたり、損失が発生したりします。

     

    事業中断を回避するためにできること

     2016年のランキングで特徴的なことは、「マクロ経済動向」と「市場動向」が新たにランクインしたことと、「サイバーインシデント」が順位を上げたこと、そして前年に引き続き「事業中断」がトップになったことが挙げられます。

     また、ランキングをよく見ると、その多くが事業中断につながるものであることが分かります。政治的リスクや法律・規制の変更、市場動向などはどうしようもないことですが、それ以外はそのリスクが事業中断の原因になる可能性が高く、しっかりとした対策が必要になります。

     特に、サイバーインシデントや自然災害は、ITの活用によるセキュリティやシステムの強化によって、最悪の事態を回避することができます。そこで最近注目されているのが、バックアップの重要性です。企業のシステムのライブバックアップを遠隔地で行うことで、自然災害に遭っても事業を継続することができます。また、企業での被害が急増している、データを暗号化して業務を行えなくする「ランサムウェア」への有効な対策にもなります。

     トップ10にランキングされるビジネスリスクは、いずれも結果的に企業が影響を受けるものです。日本の企業も、これらのリスクに対処できるかどうかを積極的に議論していくことが求められます。そのためには企業のトップがこれらのリスクを認識し、自社の現状と照らし合わせて考える必要があるのです。貴社はいかがでしょうか?

     企業に事業中断を引き起こさせる要因には、今回のランキングのようにさまざまなものがあります。それらの発生を見越して、万一の際にも事業を継続できるよう行う対策がBCP(事業継続計画)です。

    まずは、BCPに関して知るところから始めましょう。

    事業中断させない選択肢の一つとして可用性の向上がありますが、すでにご検討中の方、検討したいがどうしたらいいかわからない方はお気軽にお問い合わせください。

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