クラウド時代、IoT時代のデータ保護とバックアップの最適解とは?(後編)

    Mr.Keiichi-Hamasaki in front of the corporate entrance

    >前編から読む

    今日の企業が取るべきバックアップ手法や、クラスターとの違いと使い分けについてクエスト・ソフトウェアの浜崎圭一氏にうかがうインタビュー。後半では、同社製品NetVault Backupから見た市場や、バックアップの現状について、さらにはクラスターとの関係へと、より掘り下げたテーマでお話しいただきました。

     NetVault Backupの特徴と市場の変化

     –クエスト・ソフトウェアのバックアップソリューションが「NetVault Backup」ですが、その特徴やシェアなどについて教えてください。Mr.Keiichi-Hamasaki

     NetVaultは1990年代から存在しているソフトウェアで、20数年の歴史があります。当初はNetVault社がこの製品を販売していましたが、当時からアーキテクチャはまったく変わっていません。そしてお客様、パートナー様に最も受け入れられた理由は、Linux環境への柔軟な対応です。

     現在でもLinux環境では大半のシェアを占めている自負もありますし、その中でもOracleのバックアップ、リストアの操作性、簡易性が他の製品と比較すると、ずば抜けています。ポジショニングとしては、大規模環境、中規模環境、そして小規模環境の3つに分類できますが、「NetVault」はエンタープライズにも対応でき、どちらかというと中規模のお客様、パートナー様、もしくはIT部門の方々のリソースを軽減できる製品になっています。

    –バックアップはITにおける危機管理において基本といいますか、最初にまず考えないといけない領域であるということは、昔も今も変わらないということですね。逆に、クラウド環境や仮想環境が出てきたことで変化したことはありますか?

     商売敵がふえましたね(笑)。ただ、クラウドとの連携は少なからずやる必要があります。「NetVault」は比較的レガシーな仕組みで、レガシーなシステムに柔軟に対応できる製品です。

     クラウドとの連携は必要ですが、レガシーはレガシーで必要だと考えています。データセンターにはいろいろなシステムがあって、「このデータをバッチ処理が終わったタイミングで流していく」など、計画的なバックアップが必要です。そのためには前処理と後処理のスクリプトを連携をしてバックアップを取るという、きちんとした設計が必要になります。

     一方で、現在のクラウド環境を利用されているお客様のデータに関しては、少し考え方を変え、そこまでの煩わしい手間をかけない新しいバックアップをしましょうとご提案しています。データを戻したり、確実なタイミングでバックアップが取れていることが分かる。そこが重要です。

    バックアップの現状と傾向

    –バックアップする対象についてはいかがでしょう。以前と変化がありますか?

     一番の違いはファイルサーバでしょう。ファイルサーバに蓄積されるデータの量が飛躍的に増えてきています。データベースサーバも用途やアプリケーションが増えていますが、データそのものはあまり変わっていません。またファイルサーバに保存されたデータ独自の傾向として、保存した直後の数日間は使われるのですが、一週間を過ぎると頻度が下がり、あまり使われなくなります。その結果、データがますます蓄積されていきます。

     アクセスの多いデータのほとんどは、通常業務に使用されるExcelの会計情報や見積情報なのですが、業務と無関係な個人的な動画や画像のファイルも多いようです。個人データの保存を制限している企業が増えてきていますが、ファイルアセスメントをすると、実のところは個人データが多かったということもありましたね。

     また、最近では20TB、30TBという大容量にも関わらず、廉価なNASが数万円で売っています。すると各部門内でそれらのNASをファイルサーバとして使ってデータを蓄積するケースも多くなり、もはやIT管理者が把握できない状態になっています。IT部門としては悩みが深いところだと思います。そういうケースに対しては、難しい設計が必要ないバックアップツールで、社内サービス化する提案も行っています。

    –クラウドや仮想ソフト、もしくはストレージそのものにもバックアップの機能を搭載している製品もあると思いますが、これらとバックアップソフトの違いはあるのでしょうか。また優位性はありますか?

     たとえば、VMWareやマイクロソフト製品にも純正のバックアップツールがあります。それはその製品にバンドルされているので、その製品自体をバックアップするには有効です。ただ、やはりお客様の環境は、その製品だけで構成されるわけではありません。アプリケーションサーバやデータベースサーバ、ファイルサーバやレガシーな構成など、用途によって種々様々な製品が入っていると思います。

     これらをそれぞれのバックアップツールを使ってバックアップを取れるのかというと、なかなか難しいでしょう。バックアップソフトの強みは、そういったバラバラなものをひとつに束ねられる点にあります。また、保存先もディスクやテープなど、自由に変更できます。つまり、マルチベンダーの環境に対応できるということが、バックアップソフトの優位性と言えると思います。

     また、ストレージやスナップショットの機能を持っている製品群は、同じデータを同じ形で保存してしまうので、ランサムウェアなどのウイルスもそのまま保存してしまい、セキュリティ面では問題があります。その点、バックアップソフトはウイルスに感染する前の状態に戻せますし、データの型式を変更することも可能です。

    バックアップとクラスターの関係

    –最後に、サイオステクノロジーでは「LifeKeeper」というHAクラスターソフトをご提供しています。HAクラスターはデータの保護ではなく、アプリケーションやサービスのダウンタイムをいかに最小化するかというもので、バックアップとは目的も達成される効果も違います。しかし、事業継続という観点ではどちらも重要な要素であると考えています。その点についてはいかがでしょうか?

     そうですね。ひとつの製品ではソリューションになりません。HAクラスターで業務プロセスを止めることなく事業を継続させながら、バックアップもオンラインで取っていく。よりシステムの可用性を高めるものと、データの保全性を保つもの、その組合せがあることによって、システムが堅牢に守られる。災害対策とはまた少し違いますが、データセンター、もしくはシステム全体の堅牢性を高めるには最低限、HAクラスターのソフトとバックアップの製品は必要不可欠なのではないかと思います。

     いくらクラスターを組んでいても、共有ディスクが壊れてしまえばデータがなくなりますので、バックアップがなければどうにもなりません。ミラーリング環境であればディスクが壊れても大丈夫、という考え方もあるかもしれませんが、オペレーションミスによるデータの損失には対応できません。明確に期待できる効果や導入目的は異なりますが、企業の重要なシステムにはバックアップとHAクラスターの双方が求められるのです。

     現在は、システム障害が企業の事業継続に大きな影響を与える時代です。そのため、どのようなタイプの障害が発生しても事業を継続できるよう、システムを設計する必要があります。そこに求められる仕組みは、バックアップだけでもHAクラスターだけでも成り立たず、双方の特徴を踏まえ、補完しあうようにシステム構築しておくことが重要です。バックアップとHAクラスターは、ITにおける基本的な危機管理の手段として、車に例えるならその両輪として検討すべき存在といえると思います。

    –ありがとうございました。

    Mr.Keiichi-Hamasaki in front of the corporate entrance

     

    Mr.Keiichi-Hamasaki

    (インタビュイー)

    浜崎圭一氏

    クエスト・ソフトウェア株式会社
    技術部 リーダー

     


    クエスト・ソフトウェアについて

    クエスト・ソフトウェアは、世界100カ国で10万社を超えるお客様に、シンプルで革新的なIT管理ソリューションを6000社以上のパートナーと一緒に提供しているソフトウェア・プロバイダです。クエスト・ソフトウェアのソリューションは既存のITシステムの運用管理にかける時間とコストを削減し、お客様がよりイノベーションに投資できるお手伝いを致します。
    ウェブサイト  www.quest.com/jp-ja

    NetVault Backupについて
    NetVault Backupは物理・仮想の両環境にあるビジネス・クリティカルなデータとアプリケーションを確実に保護することができる、柔軟で拡張性に富んだエンタープライズ・データ保護ソリューションです。Linuxをはじめ、複数のOSが混在するようなシステム環境の統合バックアップに最適です。
    ウェブサイト  https://www.quest.com/jp-ja/products/netvault-backup/

     

    関連記事・資料

     

    SNSでもご購読できます。