クラウドへの移行を容易にするための12の質問

    寄稿:米国サイオス VP  Cassius Rhue
    ※この記事は翻訳されたものです。本記事の原文はこちら

    システムのクラウド移行において事前に確認すべき12の項目と、中でも大切な3つのポイントについてSIOS Technology Corp.のカスタマーエクスペリエンス担当Cassius Rhueが解説します。

    クラウド移行のベストプラクティス 

    「クラウドはますます複雑になってきています。」これは、クラウドコンピューティングとクラウド移行のブームによって生じる変化とチャンスについて説明した1時間のウェビナーでの最初の一言でした。その後講演者は、従来のITがAWSAzureGCPなどのプロバイダーに移行する際に直面しているクラウド関連の課題について説明しました。

    従来のクラウドへの移行では、移行の複雑さとして以下の9つの側面が知られていました。

    • 定義
    • 価格設定
    • ネットワーク設定
    • セキュリティ
    • ユーザー、役割、プロファイル
    • アプリケーションとライセンス
    • サービスとサポート
    • 可用性
    • バックアップ

    SIOS Technology Corp.のカスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデントとして、私はさまざまな要因によってクラウドへの移行が影響を受けるのを見てきました。これらの問題を解決するために、企業はマネージドサービスプロバイダー、クラウドソリューションアーキテクト、請負業者、コンサルタント、そして数多くの関連サービス、ガイド、ブログ記事、関連記事を調べています。

    多くの場合、外部のリソースやアウトソーシングを利用する過程で、クラウド移行の複雑な問題が完全に解決されるわけではありません。それどころか、クラウドへの移行を支援してもらうために雇った企業やチームも、障害やスピードを減速させる問題、中断や手戻りに直面することがあります。多くの場合、クラウドへの移行におけるこのような複雑さや失速は、以下の12の質問を考えていないことに起因しています。

    1. クラウドに移行する目的は何か?
    2. 現在のオンプレミスアーキテクチャはどのようなものか?ドキュメント、リスト、フローチャート、クックブックなどはあるか?
    3. アプリケーション、データベース、可用性、および関連ベンダーのすべてが、採用したいクラウドプロバイダーのプラットフォームでサポートされているか?
    4. 現在のオンプレミスのリスクと制限は何か?保護されていないアプリケーションは何か、オンプレミスで直面している最も一般的な問題は何か?
    5. クラウドのアーキテクチャと設計の責任者は誰か?このアーキテクチャと設計は、現在の定義とクラウドプロバイダーの定義にどのように対応しているか?
    6. 主なステークホルダーは誰か?ビジネスプロジェクトのマイルストーン、ビジネスドライバー、期限は?
    7. プロジェクトの計画とマイルストーンをベンダーと共有しているか?
    8. 現在のプロセス、ガバナンス、ビジネス要件は何か?
    9. 移行予算はどの程度で、スタッフの増強、トレーニング、サービスなどは含まれているか?また、継続的なメンテナンス、ライセンス、運用コストの見積もりはどの程度か? 
    10. チームの既存のスキルと責任は?
    11. ガバナンス、プロセス、新しいクラウドモデル、従来の様々な役割と責任の更新を担当するのは誰か?
    12. IaaSモデルからSaaSモデルに移行するアプリケーション、サービス、または機能はどれか?

    クラウド移行の目標を理解する

    では、これらの12の質問に答えることで、どのようにクラウド移行が改善されるのでしょうか。質問の内容からわかるように、クラウド移行の目標を理解することが、最初の、そして最も重要なステップです。

    「AWS、Azure、Googleなどのクラウドサービスプロバイダーは、特定のアプリケーションが必要とするサーバー、ストレージ、通信リソースを提供できる」ということはほぼ一般的に認められていますが、多くのお客様にとっては、「コンピュータのハードウェアと、そのハードウェアを管理するための人員が不要になる」というだけなのです。このため、お客様は検討する必要のあるクラウドの利用機会やギャップを考慮せず、機器やデータセンターの統合または削減にばかり目を向けていることが多いのです。

    たとえば、クラウドではハードウェアの管理が不要になりますが、「アプリケーションとその依存関係に対する監視と復旧の必要性をすべて排除するわけではない」ため、クラウドですべての可用性を実現することが目標である場合、その目標は達成できないかもしれませんし、オンプレミスをIaaSモデルに移行する以上のことが必要になるかもしれません。自分の目標を知ることは、クラウド移行の計画を立てる上でとても重要です。

    現在のオンプレミスアーキテクチャを理解する

    クラウド(または新しいプラットフォーム)への適切な移行に必要な2つ目の重要な項目は、現在のオンプレミスのアーキテクチャを理解するためのものです。このステップは、可用性が必要とされる重要なアプリケーションを特定するのに役立つだけでなく、その根底にある依存関係や、クラウドのストレージ、ネットワーク、コンピューティングの変更に基づいて、アプリケーション、データベース、バックアップソリューションに必要な変更の特定にも有効です。この質問に答えることは、自社のアプリケーションやソリューションのクラウドへの対応状況を評価し、現在のリスクを定量化するための重要なステップでもあります。

    これらの質問に答えることで、現在の制限について議論し、定量化する際にも大きなメリットが得られます。この段階では、クラウドには存在しない現行のソリューションの限界が見つかることが多いです。たとえば最近、当社のサービスチームは、SQLデータベースクラスターのパフォーマンス問題に悩まされているお客様と仕事をしました。移行をサポートしたSIOSの専門家がソリューションやアーキテクチャ、VMのサイジングの決定について質問したところ、後日よりアプリケーションサイズの大きいインスタンスがデプロイされ、お客様がオンプレミスのコンピューティング、メモリー、ストレージの制限により受け入れていた制限が修正されたのです。

    同様に、私たちはストレージのことを気にするお客様と仕事をしたことがあります。このお客様はディスク容量に制約があるため、より小さなディスクでアプリケーションを実行し、頻繁にサイズ変更を行うポリシーを採用していました。ストレージのコストは考慮しなければなりませんが、最小限のマージンで運用することは気にしなくてもよくなります。

    ビジネスとガバナンスの変化を理解する

    最後の質問群は、スケジュール、ビジネスへの影響、期限、クラウドでは適用されなくなるために更新や置き換えが必要なガバナンスの変更などをチームが理解するのに役立ちます。

    クラウドへの移行は、スムーズな過程になり得ます。しかし、現在の状況を把握し、いつまでに移行を完了する必要があるかを評価しないと、悪夢のような移行になってしまいます。タイミングを理解することは重要であり、関係者、アプリケーションベンダー、ビジネスのマイルストーン、ビジネスシーズンなどを考慮することは、大きな助けになります

    最後に

    SIOS Technology Corp.はサービスプロバイダーとして、お客様にマイルストーンを理解していただきたいと考えています。これによって部門間や関係者間の不整合が見つかることが多いので、上記12項目のような問いかけをすることをお勧めします。

    たとえば、DBAはカットオーバーが月末の週末に行われると思っているけれど、財務部門は月末の週末に帳簿の締めを行うことを望んでいる。またITチームは、カットオーバーを月曜日にできると考えているのに、アプリケーションチームは水曜日まで対応できない。そして法務部門は新しいNDA、契約書、ライセンス、ガバナンスの変更など、すべてをまとめるために必要なリストを調べていない、といった問題が起こりえるのです。

    各質問に答えていくことで、まとめるべき情報の断片、オーナーシップ、プロセス、意思決定者が明確化され、予算、人員配置、トレーニングに関する率直な会話が生まれます。こういったコミュニケーションによって移行を成功させることができるでしょう。クラウドへの移行戦略や高可用性の実装についてのご相談は、サイオステクノロジーまでお問い合わせください。